太陽光売電権 価格つり上げ | マクロ経済のブログ

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未着工のまま「塩漬け」の太陽光発電建設予定地(徳島県海部郡)


政府は再生可能エネルギーの推進を強調する方針を打ち出している。だが電力買い取り制度で普及を後押しする太陽光発電の稼働は計画の2割にとどまり、ひずみも目立つ。背景を探ると「塩漬け」案件を億円単位の高値で売買するブローカーの暗躍ぶりが浮かび上がる。

「政府の認定を受けた『売電権』を5億円で買わないか」。あるブローカー(仲介会社)から話を持ちかけられた建設関連会社幹部は、その価格に思わず耳を疑った。

塩漬け解消へ NTT系動く
 
案件は千葉県南部にあるゴルフ場跡地。2万キロワットと大型の太陽光発電を始めれば、初年度の1キロワット時40円(税抜き)の高値で売電できる権利がついている。認定後の売買は法的には可能だが、言い値は売電権のみで5億円。相場の倍以上高い。

ここだけではない。売電権がついた島根県西部のゴルフ場。あるブローカーが土地代込みで45億円で売却を打診している。「元は3億円程度の土地。普通ならとても採算が合わない」(関係者)。目当ては投資先を探して日本の再生エネ市場になだれ込む“チャイナマネー”。実際精力的に買いに動いているという。

 再生エネの普及を狙い2012年7月に始まった固定価格買い取り制度。政府は企業の投資を促すため、割高な買い取り価格を設定してきた。

初年度の40円はドイツの倍以上。初年度に申請者が殺到し、その規模は発電能力で1870万キロワットと原発約18基分に上った。

 だが運転を始めたのは2割にすぎず、大半は未開発の塩漬けだ。融資の不調や地権者との調整、事業者不在、資材の値下がり待ち――など理由は様々。これを見て暗躍し始めたのが売電権を転売するブローカーだった。

 再生エネ関連の調査会社によると、初年度の売電権の相場は発電能力1千キロワット(年間売電収入の目安は約4千万円)あたり、300万~1千万円。それが最近では6千万円まで高騰するケースもある。権利売買の実情を知る札幌市の不動産業者は「バブル時代の土地取引のようだ」と話す。

 稼働が遅れる実態をみて、最近では塩漬け問題の解消をビジネスにつなげる動きも出始めた。

「資金調達や社内の合意ができずに中断した計画が数多くある」。NTT西日本子会社で太陽光発電所の保守管理を手掛けるNTTスマイルエナジー(大阪市)の谷口裕昭社長は説明する。

同社は4月から未稼働の案件を引き継ぎ、自社で建設する事業を始めた。工務店などの取引先を通じて、地元企業が抱える未稼働案件を発掘。14年度中に約100カ所で計3500キロワットの発電を始める計画という。

 塩漬け案件の増加、権利転売の横行――。こうした事態に政府も動く。

経済産業省は初年度に認定した中大型の計画について調査を実施。今年1月末時点で土地や設備を確保していない672件を認定取り消しの候補とした。事情を聴いたうえで取り消すか決める。さらに14年度からは、認定から半年以内に土地の契約書と設備の発注書の提出を義務付けた。

政府の規制強化「抜け道」指摘も

だが、政府の規制強化には抜け道があるとの見方もある。「土地と設備の契約書は地主や設備販売会社、ブローカーが結託すれば作成が可能」(太陽光発電関係者)。電力中央研究所の朝野賢司主任研究員は「実効性は不透明」と指摘する。

ソフトバンクや京セラ、シャープなど計画通り運営を始める事業者も少なくないが、塩漬け案件の多さを考慮すると、稼働するのは「認定の5割程度」との声がもっぱら。

電力会社の買い取り費用は結局は消費者や企業など利用者が負担する。塩漬けや権利売買が横行し、実態が不透明なままでは消費者の不信が募る可能性がある。

政府のエネルギー基本計画では、再生エネの導入推進を掲げる。数値目標の明記は避けたが、「30年時点で約2割」を参考値として脚注に示す方向だ。計画と実態が乖離(かいり)する太陽光発電。「塩漬け解消」の具体策を打ち出せなければ、再生エネ推進も空転しかねない。