電機大手、休眠特許で稼ぐ | マクロ経済のブログ

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 電機大手が自社では使われない休眠特許の活用に乗り出す。東芝(6502)は半導体部門に専門チームを設置、他企業にライセンス供与しベンチャー企業の育成などを進める。

富士通(6702)は自治体と連携、中小企業への技術供与を増やす。電機大手は事業撤退などで不要になった特許を多く抱える。他社への供与を通じて収益の下支えを図りたい考えだ。

 東芝は半導体部門で特許ビジネスに詳しい専門家をトップとするチームを設立、営業を始めた。古くなった技術や、本体の事業には生かせない技術を他社にライセンス供与する。特許をベンチャー企業に貸与したうえで東芝が出資、事業支援することも視野に入れる。

 半導体技術はほぼ2年ごとに新技術が開発され、不要になる特許が多い。携帯電話の動作を速くする技術など、半導体の関連技術として開発したが、東芝社内では使い道がない例もある。こうした特許を供与し、半導体部門だけで2018年度に100億円の特許収入を得たい考え。

 同社は全社で5万超の特許件数を持ち、うち半導体部門は社内5部門のうち最大の特許数を保有する。半導体部門を手始めに、他部門でも特許収入の拡大を目指す。

特許の売却ではなくライセンス供与とすることで、米国を中心に特許を集めて訴訟に持ち込むパテント・トロール(特許の怪物)に特許が渡るのを防ぐ狙いもあるようだ。

 富士通は地方自治体や地域金融機関と連携、国内の中小企業にライセンス供与する体制を整備する。すでに開発拠点を置く川崎市を通じて汚染物質測定装置の開発に必要なセンサー技術を市内の中小企業にライセンス供与している。

こうした取り組みを広げるため、札幌市や堺市、全国の信用金庫などとの連携を加速する。同じ川崎市内に拠点を持つ日立製作所(6501)やNEC(6701)などとも特許情報を交換し、各社の休眠特許をまとめて活用する方法も検討する。

 特許庁の12年の調査によると、国内で企業などが保有する約135万件の特許のうち、47%が使用料などの収益を生まない休眠特許となっている。東芝や富士通などは中小企業などへのライセンス供与を通じて収益化を図る考え。



休眠特許を巡っては政府系ファンドの産業革新機構も活用に動き出している。

 昨年7月、三洋電機で特許管理に携わった吉井重治氏が社長を務めるアイピーブリッジ(東京・墨田)が運営するファンドに、パナソニック(6752)と三井物産(8031)と共に出資した。

ファンドはパナソニックから半導体や携帯電話技術など約3千件の特許を取得。休眠特許の受け皿としてパテント・トロールへの流出を防ぐ。

 国内外でセミナーなどを開き、新興国企業や中小企業など広くライセンス先を募る。アイピー社は今後も出資企業を増やし、現在は30億円のファンドを300億円に拡大する計画だ。



米IT大手、「売らずに囲う」 訴訟リスク対策



 大手電機メーカーが休眠特許の活用に乗り出す背景の一つには、使わなくなった特許であってもできれば売却したくないという事情がある。

 訴訟目的で特許を買い集める海外のパテント・トロール(特許の怪物)の手に渡れば、その特許で逆に日本企業が訴えられるリスクが高まるからだ。

 米国では近年、トロールが企業を相手取って特許侵害訴訟を起こし、高額な和解金を請求する例が増えている。

 米政府の資料によると、米国では2012年の特許訴訟件数は約4700件と5年前の2倍近くに増加。うちトロールなど特許管理会社によるものが6割に達し、オバマ政権も対策に乗り出している。

 トロールは日本企業の特許も積極的に買っており、例えばトロールとして有名な独IPコムには日立製作所の特許が流れている。

 こうした状況を避けるため、日本企業も休眠特許を自社で活用したり、国益保護に沿って運営する産業革新機構のファンドに売却したりする例が目立っている。

 成長を続ける世界のIT大手は、トロール対策や競合他社との紛争に備えて、自社保有の特許拡大に動いている。

 スマートフォンに使う特許は約10万件ともいわれ、他社の特許を使わずに製品を作ることは困難だ。

他社から訴えられ、和解のために特許の相互利用などを交渉する場合、自社に有利な条件で解決できるかどうかは、保有する特許の数と内容に左右される。

 今年1月には、米ツイッターが米IBMから900件以上の特許購入を発表。米グーグルもかつて買収した米モトローラ・モビリティーの端末事業を中国レノボ・グループに売却すると表明したが、特許は自社に残す。

▼休眠特許とは 新技術の開発で古くなったり、事業撤退などで使われなくなった特許。特許は申請時のほか、権利が存続する間は費用が発生する。大手電機の場合、年間で10億円単位の費用がかかるという試算もある。

特に休眠特許を多く抱えるのは電機メーカーだ。事業分野が広く、製品サイクルが速いため、年間の特許の取得数が数千件に及び突出している。

▼特許管理会社とは 自社では製品やサービスを提供せず、特許権の売買を業務とする企業。個人発明家や弁護士などが起業する例が多い。経営破綻した企業などから特許権を買い取り、メーカーに利用料を請求する。

米国では上場するなど社会的に認められている。悪質なものはパテント・トロール(特許の怪物)と呼ばれる。