『ジョイント・ベンチャー契約の理論と実務』判例タイムズ社 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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ジョイント・ベンチャー契約の実務と理論―会社法施行を踏まえて/判例タイムズ社
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『ジョイント・ベンチャー契約の理論と実務』判例タイムズ社

2006年、本文約378頁。

理論編のみ読んだ。

ジョイント・ベンチャー契約として、以下の点が問題となる。

・役員の選任、解任

・拒否権

・議決権拘束条項

以上については、種類株式を用いない場合には、債権的効力しかないと解されている。

・株式譲渡制限

・合弁の終了(解散の訴え

・倒産手続(破産、特別清算、民事再生、会社更生)特別清算の検討が抜けている。



論者は種類株式を使わない方法、すなわち、株主間の合意、定款で定める方法で検討している。

しかし、せいぜい損害賠償請求くらいしか救済方法がない。

種類株式を発行すれば、種類株式の内容が会社法でも有効であり、かつ商業登記されるので、第三者の予測を害する可能性が少ない。また、損害賠償請求だけでなく、差止請求(本裁判、仮処分)も可能である。

・役員の選任、解任については、定款で決議要件を加重するだけでなく、累積投票、種類株式を用いる方法が有効である。


・先買権(コール・オプション)については、取得条項付株式、譲渡制限株式の指定買取人として、定めれば十分であろう。

・取得請求権付株式(プル・オプション)

・いずれも、株式譲渡の対価の合理性が必須の問題である。実務的には、むしろ、重要であろう。株式の売買価格の算定方法の合意も、対価がある程度相当である場合に限り、有効であろう。協議が整わなければ、裁判所に価格決定の申立てをする。同申立権の事前放棄をすることが指摘されているが、私見では、非訟事件の裁判を受ける権利の事前放棄として、無効であると解する。

・なお、議決権行使禁止仮処分は、名義だけで実質的な株主ではない場合、株主総会の議事進行が著しく混乱する場合にしか認められないのが実務である。

・株券の処分禁止仮処分・執行官保管の仮処分、株主名簿書換え禁止仮処分は、株式譲受人や株主の債権者からの債権保全のための執行、あるいは、名義だけで実質的な株主ではない場合にしか認められないのが実務である。


・独占禁止法との関係

ジョイント・ベンチャーは、独占禁止法上の問題がある。

企業結合審査では、株式保有・役員兼任などが独占禁止法で明示され、企業結合ガイドラインが問題となる。

市場支配力を形成・維持・強化する場合には、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法に該当する。

共同研究開発ガイドラインも問題となる。

なお、日本と異なり、アメリカでは業務提携ガイドラインが存在する。