労働事件に関する国際裁判管轄 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属

○国際裁判管轄

国際裁判管轄は、日本の裁判所に訴えを起こすことができるかどうかの問題である。

日本の裁判所に管轄がある場合であっても、労使間の準拠法が外国法の場合には、適用される法律は当該外国法である。ただし、その場合であっても、法の適用に関する通則法12条、40条などが適用される。

日本の裁判所に管轄があることが肯定されたうえで、民事訴訟法4条以下により、日本国内のどの裁判所に管轄があるかが決められる。

・個別労働紛争についての民事訴訟法の特例

労働者が使用者を訴える場合、民事訴訟法3条の4第2項が適用される。したがって、労務の提供の場所が日本国内の場合(事務所・勤務地などが日本国内の場合)、外資系企業の場合や労働契約で外国で裁判を起こすべき旨の条項がある場合であっても、労働者は日本の裁判所に訴えを起こせる。

労働契約で裁判所に関する管轄の合意については、民事訴訟法3条の7第6項が適用される。

なお、特殊な例であるが、例えば、外国の航空会社(スチュワーデスなど)や外国の労働者派遣会社について、勤務地が日本の場合、外国に住所がある外国人であっても、外国企業に対する訴えを日本の裁判所に起こすことができる。

ただし、労働者が外国に住所がある場合、外資系企業が日本の裁判所に訴えを起こす場合には、この特例は適用されない(民事訴訟法3条の4第3項)。

・民事訴訟法の国際管轄に関する一般原則

労働契約上の債務(賃金など)が問題となる場合、日本の裁判所に管轄がある(民事訴訟法3条の2第3項、3条の3第1号、4号など)。

外国会社の場合も、日本の裁判所に管轄がある(民事訴訟法3条の3第5号)。

・労災の場合

労働者災害について、労働者が使用者に訴えを起こす場合、債務不履行の場合には前記の条文、不法行為に基づく損害賠償請求の場合には民事訴訟法3条の3第8号が適用されるので、日本に裁判管轄がある。

労災にあった外国人労働者で外国に帰国していても、勤務地や労災の場所が日本国内の場合、日本の裁判所に管轄がある。

・労働者が死亡した場合

労働者が死亡して、相続人が訴えを提起する場合、日本に裁判管轄がある(民事訴訟法3条の3第13号)。 

例えば、労働者が死亡して相続人が外国にいる場合、未払い賃金、労災による損害賠償請求などは、日本の裁判所に管轄がある。


・職務発明に関する訴えなどの場合

日本に特許権などの登録がされている場合、日本の裁判所に管轄がある(民事訴訟法3条の5第2項)。

日本に管轄がある場合に、日本国内でどの裁判所に管轄があるかについて、民事訴訟法6条に特例がある。