有給休暇の消化、買い上げと退職
○年次有給休暇の買い上げ
年次有給休暇の買い上げ(金銭に換算して、年次有給休暇相当する分の金銭を使用者が労働者に支払うことによって、労働者に年次有給休暇を与えないこと)の予約をし、これに基づいて労働基準法39条により請求し得る年次有給休暇の日数を減じ、または、請求された日数を与えないことは、労働基準法39条に違反する。
○時季変更権と使用者の配慮
労働基準法の趣旨は、使用者に対し、できる限り労働者が指定した時季に休暇を取ることができるように、状況に応じた配慮をすることを要請している。そのような配慮をせずに、時季変更権を行使することは、労働基準法の趣旨に反する(最高裁昭和62・7・10)。
○年度途中退職者
年度途中で退職する従業員に付与する年次有給休暇の日数も、労働基準法の付与日数でなければならず、年度当初から退職時期までの月数で按分で計算した日数では足りない(東京地判昭和54・6・20)。
○退職者と年次有給休暇
労使協定による計画的付与(労働基準法39条6項)は、当該付与日が労働日であることを前提に行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画的付与はできない。したがって、退職予定者が計画的付与前に計画日数分(年次有給休暇のうち5日を超える部分)の年次有給休暇を請求した場合には、使用者はこれを拒否できない。
○解雇と年次有給休暇
解雇予定日を超えて年次有給休暇の時季変更はできない。
年次有給休暇の権利を有する労働者が、解雇の予告を受けたときは、年次有給休暇の権利は予告期間中に行使しなければ消滅する。