第2 任意後見制度 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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2 任意後見制度

1 任意後見制度の概要

 任意後見とは、本人の判断能力があるうちに、精神上の障害により事理弁識能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約(任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものに限ります。)を締結するものです(任意後見契約に関する法律21号参照)。

 任意後見契約は、一定様式の公正証書で作成することが求められ(任意後見契約に関する法律3条)、任意後見契約が成立した場合には、その旨が登記されます(後見登記等に関する法律5条)。

 また、任意後見契約は、代理人をコントロールすべき本人の事理弁識能力が衰えた段階で機能するものであることから、本人に代わって代理人をコントロールする主体として、後見監督人の選任の申立てが必要になります(任意後見契約に関する法律4条)。

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 費用についてですが、任意後見契約作成時に、2万円程度の公正証書作成費用、任意後見監督人選任申立て時に、1万円程度の裁判所実費、鑑定を要する場合には判断能力を鑑定するための鑑定費用510万円がかかります。なお、事前に申立ての際に添付する医師の診断書等の費用は別途用意しておかなければなりません。

 また、任意後見契約人については、任意後見契約で報酬を定めた場合にはその報酬費用がかかります。

 任意後見監督人には、裁判所への申立てにより、家庭裁判所の定める報酬を受領する権利が与えられています(任意後見契約に関する法律74項)。

3 法定後見制度との関係

 任意後見制度は、本人の判断能力が十分な場合に契約が締結されることを想定していますが、任意後見契約を締結する時点で本人が行為能力を有することが要件となっているわけではありません。

 したがって、補助や補佐の対象となる者でも、任意後見契約を締結することは可能です。

 また、制限行為能力者の法定代理人が本人のために任意後見契約を締結することも可能です。

 任意後見制度と法定後見制度とでは、任意後見制度が優先されます。すなわち、任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができます(任意後見契約に関する法律101項)

 任意後見制度利用の費用