第4部 信託編 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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4部 信託編

1章 信託とは

1 信託の定義

 信託とは、信託契約、遺言または自己信託のいずれかにより、特定の者が一定の目的に従い財産の管理または処分およびその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法21項)。

 平成18年制定の新信託法の成立により、事業承継における信託の利用可能性が注目されています。


2 信託の性質

 信託は、委託者(信託をする者)が、受託者(信託行為の定めに従い、信託財産に属する財産の管理または処分およびその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う者)に財産を移転し、受託者をして、その信託の目的にしたがい財産を管理・処分させ、その収益を受益者(信託行為に基づいて受託者がする給付を受ける者)に取得させるものです。

 その法的構成は、信託によって、信託財産についての所有権、担保権その他の権利については受託者に完全に移転し、受益者は受託者に対し、信託目的に従った管理・処分等を求める債権的な権利を取得するという考え方が通説的立場です(四宮和夫『信託法(新版)』59頁)。

 かかる信託の性質の特徴としては、(ⅰ)財産の所有名義が、委託者から受託者に変わること、(ⅱ)受託者の財産の管理・処分は信託目的に拘束されること、(ⅲ)信託財産は、受託者の固有財産とは区別されることが挙げられます。


※委託者と受託者については兼任が認められます(自己信託)

※受託者と受益者については基本的に兼任は認められません(受益者が複数存在している場合には、そのうちの一人が受託者となっている信託も設定することが可能です)