あとがき。

アーティスト元年、かも、と書いたのは、結構本気だったりします。
なぜなら、自分の一番真ん中のコアな部分を掘ることが、よい評価を受ける場っていうものに初めて当たったから。

おこがましく聞こえようとなんだろうと、
自分の作品が、他の誰のより一番に決まってんじゃん、私の哲学以上に理解の深い人なんていない、負けるわけないじゃん……!

そんなふうに、心のどこかできっちり信じちゃえるような分野なんて、これまでなかった。

研究で学会に行っても、そこがそんなに特別素敵な場所には思えなかった。でもArtの展示会やなんかだったら、そこにいることがすっごくHonorだと自然にテンションあがる。
アーティストさんの名前も作品も、気になったものは一度観たら結構覚えている。これまで研究者の大御所の顔も名前も興味なかったのに……!

だから、私が立つ場所はここだったのかも知れないなって、本当にそういう手応えを感じました。

私は、どうやらアーティストだったみたい。

私は研究しながら、実はアートをしてたんだなぁ、と。

分かってしまえば全てはそんなふうだった。
昔から、自然とアトリエっていう響きに憧れてみたり、世界観の構築や自分との対話で思考の旅をするのが好きだったり、食器やマグなどデザインのよいものに惹かれてお金を出してみたり、美術館や博物館に割りとちょこちょこ足を運んでいたり。

仕事をやめたりはしないです。作りたいもの、追求したいものがしっかりあるのに、
評価されるために媚びる作品を作るようになったら本末転倒だから。
それに、私の仕事、数値シミュレーションって、数学も物理もコンピュータも使う。
どれも本質の理解を深めるのによい材料なんです。
具体的に人に価値を与えられる仕事だし、アートとしても人生としても、何にも無駄にならない。

そういうわけで、私は、自分の一番真ん中を深く掘る、そういう精神活動が肯定される場所があると初めて知ったので。
本当にアーティスト元年かもなぁ、と思っているところなんです。