家の外に続々と人が出て来る。


泣いてる場合じゃない。


陽奏を抱えて向かいの家に走る。
お向かいさんは年配のご夫婦が住んでいる。
引越して来たばかりの私達にとても親切にしてくれた、穏やかなご夫婦だ。


玄関のチャイムを何度も鳴らすが返事がない。(停電していてチャイムが鳴る訳がない事すら考えられなくなってた)
庭にまわってみるが、台所にも茶の間にも人影が見えない。
「〇〇さぁーん!!」
とガラスを叩いてみるが反応がない。


出かけているのか?

それとも家の中で倒れてるのか?

隣の家の方とも話し少し様子を見る事に。

その後外に出て来た姿を見て安心する。


消防車や救急車のサイレンが鳴り響き出す。

どこかで名前を呼ぶ声や何かが割れる音がしている。

主人は!!
主人は無事だろうか!?


主人の会社は仙台空港の近くにあって、少しの地震でも大きく揺れる。
あの揺れじゃ駄目かもしれない…
電話をするが携帯がつながらない。
メールはつながるだろうか…
主人にメールをする。
きっと私達の事も心配してるはず。


お願い!!
つながって!!
神様!お願い!!
主人を連れていかないで!!


祈る思いで返信を待つ。



友達と赤ちゃんは大丈夫だろうか…


メールをすると、大丈夫!と返信があってホッとする。
良かった…!


実家と主人の家族にも私と陽奏が無事な事をメールする。


その間も何度も余震がある。
外は雪が降って来た。
暗くもなって来た。


陽奏と二人でいてこんなに心細くなった事はない。


主人からメールが入る。

「今からもどる」


良かった!
無事だった!!


神様に感謝した。
同じように朝が来て、主人はいつも通り仕事へ。
いつもと同じように陽奏といないいないばぁ!を見ながら朝ご飯を食べて、掃除や洗濯をしてランチに食べようとHBでパンを焼く。

友達から嬉しいメールが届く。
「今日午前10時6分に元気な女の子を出産しましたニコニコ
今回も安産だったよにひひ

何度かメールをやり取りする。
「名前の候補が多すぎて決められないニコニコ
赤ちゃん可愛いよラブラブ

メールには産まれたばかりの小さな赤ちゃんがあくびをしている写真が添付されていて、幸せな気持ちになる。


午後2時。
お昼寝から起きた陽奏とパンを食べ陽奏のおむつを変えていた時…


突然揺れを感じる。

地震?

そう思った瞬間家が大きく揺れ始める。

パニックになっている私の頭の中では外に逃げればいいのか、家にいた方がいいのか分からなくなる。

とりあえずダイニングテーブルの下へ陽奏を抱いて逃げる。

揺れはどんどん大きくなって、テーブルの足を掴まないといられない。


怖い!!!

怖い!!!!

いろんな物が落ちて来たり倒れる音がする。


腕の中で陽奏が泣き叫んでる。
このままじゃ家が壊れて潰される…


「神様!お願い!助けて!!」
そんな事を叫んでいたと思う。

大きな声を出した事で頭が少し冷静になる。


携帯!!!

テーブルの上から携帯を取る。


外に出ないと!!


陽奏を抱えて外に逃げる。

外に出ると下校中の小学生が数人しゃがみ込んでいた。大人が二人一緒にいるのを見て安心する。


揺れがおさまる。


陽奏を見るとズボンを履いてない。
とりあえず暖かくしないとと思い家に戻るが足が震えてうまく歩けない。


家に入り陽奏のズボンとダウンを掴む。
そうしているうちにまた地震が来る。


急いで外に出て陽奏にズボンを履かせダウンを着せる。
抱きしめたまま地震がおさまるのを待つ。


ふと陽奏の顔を見ると不安そうな顔。
笑ってみると、陽奏も笑顔になる。


生きてた…
笑えた…


涙が出た。
突然の地震から一週間。
家族みんな無事だったものの、毎日ないものばかり数えてました。
電気がつかない、水が出ない、ガソリンがない、携帯が使えない、親戚と連絡がつかない、あれもない、これもない…


でも私なんて被害が少なかった方!比べ物にならないくらい大変な人達が沢山いる!私がこんなんじゃだめだ!あるものを数えよう!
命がある!家族がいる!家が残った!給水所に行けば水がもらえる!実家からもらって来てたお米だってまだ残ってる!友達が無事だった!いつもは見えない星空が凄く綺麗だった!今日も陽奏が元気だった!!………


ないものを数えたらきりがない。
でも、あるものを数えてもきりがないよ!!




電気が復旧し、テレビや携帯で目にする沢山の支援・祈り・優しさが不安な毎日を過ごす心の隅々まで染み渡り、涙に変わります。


本当に本当に本当にありがとうございます!

ありがとうございます!!


私は弱い人間だからきっと何十年か後には今感じている恐怖も感謝も薄れてしまって、全て当たり前のように生きてしまう。
そうならないように、そして陽奏が大きくなった時に沢山の人達の祈りと優しさをもらって生きられた事を知ってもらう為に、地震が起きてからの行動や感じた事を残しておこうと思います。

書ける時に少しづつ…