元禄赤穂事件の本質とは?
忠臣蔵の本質を明らかにするために
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先ずは、四段階に分けた最後の部分について説明しておこうと思う。
(締め括りの文章)
私ども死後、御検分の御方御座候ハゞ御披見頼み奉り候、此の如くに御座候、以上
これほど短い文章であっても難しい漢字や言葉が並ぶと読みにくいものだ。
とりあえず日本語だが順を追って日本語に直訳してみようと思う。
御検分:調べる
御方:お方
御座候:ございます
候はば:~ますならば
御披見:文章等を読むこと
「私ども死後、調べるお方がございますならば、本文を読むことをお頼み致します。かくの如くでございます。以上」
やはり現代風の文章にすれば理解しやすくなる。
これほど簡単な文章なのかと思えるほど簡単な文章となった。
この段階で「行」を読んだということだ。
次に「行間」を読む作業が必要になる。
文章を書いた者の意図することである。相手が何を伝えたいかを汲み取ることを「行間」を読むという。
例えば「調べる」とは、何を調べるのか。
この場合、本事件であろう。本事件とは「元禄赤穂事件」を指す。
また、文章を読むことを頼んでいるが、その文章とは「口上書」以外にない。
つまり…
「私たちが死んだ後に、本事件を調べる方がいらっしゃるならば、本口上書を読むことをお頼み致します」
短文で分かりやすいと思えるはずだ。
ところが、簡単に思えるのは、やはり基本的に「行」すなわち「文字」を読んでいるからだ。
行間を読む作業、文章から意図することを汲み取ることは、さほど容易くない。
この文面で最も汲み取るべきことは…
「私ども死後」と書かれていることだ。
つまり、大石内蔵助以下46名は、自らの死を告げている。
この意図を汲み取る必要がある。自分たちがこの世を去ったことを前提として、本事件を調べる場合は、本口上を読んで欲しいと頼んでいるのだ。
「死人に口なし」という言葉があるが…、その状況が前提となる。その状況とは、自分たちは言いたいことが言えなくなる状況であろう。
何も主張出来なくなることが前提で、本口上文を読んで欲しいと頼んでいる。ということは、自分たちの言いたいことは本口上文に書いているということが汲み取れる。
そう、彼ら赤穂47士が伝えたいことは、吉良邸推参の趣旨である。
言い方を変えれば「大義」である。
現在の忠臣蔵観は…
主君に対する忠義による吉良邸討入り。あるいは、「仇討ち」である。
ところが、本口上書には「吉良邸討入り」の趣旨は存在しない。元禄赤穂事件を調べるのであれば、本口上書をよく読んで欲しいという赤穂義士たちの思いは現在に伝わっているのだろうか。