黒椿(1)煉獄と神楽 | 1904katuoさんのブログ

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今更ですが、舞台「黒椿」の感想を書かせて下さい。

間違い、私見、ネタバレをお許し下さい。


この作品を「ミュージカル」として観ると、全体の歌唱力にがっかりしてしまうかもしれません。

(←何様発言をお許し下さい)

ですが、とても楽しい夏祭りのような作品でした。

大衆演劇の醍醐味が、溢れていたと思います。

客席には、それぞれの役者さんや、女性アイドルや、ミュージシャンや、狂言など、様々なジャンルのファンの方々が入り交じっていたと思います。

そして、老若男女、誰もが楽しめる作品だったと思います。


ストーリーは、元禄時代、千年以上生きている、純血種の吸血鬼、煉獄(和泉元やさん)と家族を吸血鬼に殺され、復讐を目的に生きる神楽(小川麻琴さん)、恋人、葉奈(前田希美さん)のために、純血種の煉獄を狙う、敵役である、不完全な吸血鬼、凶夜(三浦孝太さん)との戦いと宿命の物語です。

そしてラブストーリーです。


荻田浩一さんの演出作品を観たのは、初めてでした。

メインキャスト以外の登場人物を、大きく分けると「孔雀座のメンバー(神楽の家族のような存在の、旅一座。ヴァンパイア・ハンターでもある)」、「下町の人々」、「ヴァンパイア集団」の三つのグループになります。

メインキャスト以外でも、登場人物一人一人の役柄の個性が活かされていて、個性の出し方と、全体の調和とのバランスが、とても好きでした。


そして、主人公の煉獄は、優しくて飄々とした、町の人気者なのですが(血を吸って欲しい女性は、順番待ちです(笑))、和泉さんの演技からは、煉獄の抱える深い孤独が、しっかりと伝わってきました。

(今、煉獄と仲良く過ごしている町の人々は、数十年後には、もういません。煉獄一人を残して、皆が命を終えていきます。
ずっと、その繰り返しだったのだと思います)


神楽役の小川さんに、アイドルの実力を見ました。

アイドルのコンサートのような歌唱方でしたが、歌って踊って、アクションをするシーンが多いのに、最後まで息が切れませんでした。

(町娘、夕顔役の下川みくにさん(歌手)が、パンフレットの対談で「本当に普通に歩いているだけで、そこに歌を乗せて歩くとブレるんですよね」と、おっしゃっていました。

プロのアイドルと、本物のミュージカル俳優の凄さを感じました)

そして、この作品の小川さんからは、二番目に重要な役割としての、強い責任感を感じました。

小川さんの神楽は、強くて健気で、魅力的でした。


和泉さんの煉獄は、作品全体を暖かくまとめていました。

後半の煉獄のソロ、「千年の命」以外は、「歌では、あまり感動出来ない‥」と、残念な気持ちはありましたが、それでも、和泉さんの煉獄が好きです。

「実力のあるベテランのミュージカル俳優が、煉獄を演じてくれればいいのに‥」とは、全く思いませんでした。

(千秋楽のトリプルアンコールの奇跡は、和泉さんのカンパニーへの愛と心遣いがあったから、起こったのだと思いました)

そして、皆に慕われながらも孤独だった煉獄と、真っ直ぐな神楽が、恋に落ちる気持ちが理解できました。

吸血鬼とヴァンパイア・ハンターとして出会っているのに、二人の恋の中には、明るさが見えました。

それが、凶夜と葉奈の、出口の見えない悲しい愛と対比されて、とても切なかったです。



まだ続きます。

読んで下さって、本当にありがとうございました。