小説「青春の日々」⑫ | ♪Word Collection♪

小説「青春の日々」⑫

「亮」と書かれた文字。
何故、この文字なのか。
その事がずっと気になってた。
「なんで僕の名前なんだ…?」
これが寝る直前まで考えてた
ことである。

次の日。起きたのが8時で
かなり驚いた。
「なんで起こさないのさ!?」
「…あんた、土曜日なのに
学校行くのかい?」
そう言われてやっと気がつく。
今日が土曜日。休日だ。

ずいぶんと気を張り詰めたのか
曜日もわからなくなるなんて。
休日は好きでも嫌いでもないが
暇になりすぎるのが嫌だった。

昼寝しようとしたとき、
「亮!夏葉ちゃんだよ!」
「は~い。」
階段を下りて玄関へ向かった。
「あんたのこれかい?」
「そんなんじゃないよ!」
母さんも父さんも
僕に彼女がいるのを知らない。
言わない自分が悪いのだが
この時の会話に心が
沈みそうだった。

扉を開けると夏葉がいた。
「おはよう…。」
そう一言挨拶した後に、
「なんか僕に用?」
「晴れてるから一緒に
出かけないかなぁて思って…。
嫌なら別にいいんですよ?」
少し焦った顔をした夏葉を
見てクスッと笑って
「暇だから大丈夫だよ。
じゃあ着替えてくるから、
ここで待っててね。」

そう玄関の扉を閉めて
部屋で着替え始めた。
いつも適当に済ます着替えが
20分程掛かった。

「ごめん、待たせたね。」
「いいえ。急に誘ったのは
私の方ですから。」
「それじゃあ何処へ行く?」
「とりあえず街を知りたいから
天名さんに任せます。」
そう言われて少し悩んで
「わかった。じゃあ…。」

2人で歩き始めた。
僕の知ってる景色を
夏葉に見せて案内しながら。
僕が通っていた小学校や
如月と遊びほうけた公園。
あと図書館や遠くの本屋まで
案内した。

夏葉は喜んでいた。
太陽の陽射しに負けないくらい 輝いている笑顔を見せて。
最後に僕は如月との秘密基地に
案内しようとした。

ただ、秘密基地に着くと
如月が何やらボーッとしてた。
邪魔しちゃいけないと思い、
僕は夏葉を連れて即座に
立ち去った。

昼ごろ、僕らは街に行った。
沢山の人々で埋め尽くされた
地下街で昼食を取った。
「今日はありがとう。」
「いや別にいいよ。
そういや、僕のアドレス
教えてなかったっけ?」
「はい。私、最初に携帯で
メールしようかなと思ったけど
アドレス知らなかったので。」
「じゃあ今、教えておくよ。」
「はい。」
この会話をした後、
僕らは映画を見に行った。

「ポップコーン食べるかい?」
「じゃあいただきます。」
見る前にポップコーンを買い、
2人で分けて食べながら
映画を見た。
お互い、感動してしまい
涙を流していたのを覚えてる。
流し終えてやっと会話をした。

「すごかったですよね…?」
「うん。僕も映画で泣いたの
初めてだよ。」
「そうなんですか?
私はしょっちゅうですけど。」

映画を楽しんだ後、
地下鉄に乗って駅まで行って
そこから家まで歩いた。
その途中…。

「天名くん。あの紙のコピー
今持ってる?」
突然言われて焦ったが
「持ってるよ。」
「見せてください。」
夏葉は真剣に紙を見て、
「天名くん。」
「ん。何?」

「これを「リョウ」と読めば
確かに天名くんの事かも
知れないんだけど、
この字の別の読み方を
知っていますか?」
「知らないけど…。」

「この字、「アキラ」とも
読めるんです。」
「アキラ?」
「だからもしかしたら、
このアキラっていう人が
天名くんに罪を被せるために
書いたと思うんです。」

タコは多分、あの字を
「リョウ」と読んだ。
それなら確かに話が繋がる。
でも、学校に「アキラ」なんて
いるのだろうか?
それを日曜日、僕はずっと
考えていた。