「えっ?これ私が読むの?」
(はい、お願いします。)
「はぁ?めんどくさ、前みたいに洋介が読めばいいじゃん」
(いや、いつも洋介君だと読者も飽きちゃうじゃないですか。だから、今回は天蘭さんに読んでもらいたいんです。実際、天蘭さん人気すごいですよ…)
「ばっ、バカ言わないで。でもまあ、こっ、今回だけ読んであげるわ。今回だけよ。と、言うか貴方誰?」
(私ですか?いや、私はこの小説を司る者と言うか作者と言うか…そんなことより、早く前回までのあらすじを!!)
「意味わかんない。まあ、いいか。では、前回までのあらすじをこの私、早見天蘭が解説するわ。前回、大空剣を探して南星町を歩き回った私たち。当然大空剣はどこにも見当たらなくて、諦めて良縁寺ってお寺に梅干しを貰いにいったところ、またもあのバカのデザスタンが現れて料理対決になったの。まあ、見事私の負け。料理出来たはずなんだけどなぁ…。んで、帰りがけに良縁寺の裏で突き刺さった大空剣を見つけたのよね。この私が。これで新武器登場!!、と言いたいところなんだけど… では今週も地球守護神ウエザリオン、始まります!! …二度とやらない…」
突き刺さった大空剣を見て天蘭と洋介は立ち尽くしている。
「こっ、これが、大空剣なのか…」
洋介は驚きと興奮を抑え話すが、それは難しい。
「そう見たいね…」
天蘭は一抹の不安を感じているそぶりだった。
「よっ、よしっ。剣を引き抜くぞ。」
洋介は刺さって逆さまになった剣に手を伸ばす。
「ダメッ!!」
とっさに天蘭が洋介の腕を掴む。
「どうした、天蘭。剣のことを言ったのはお前だぞ。」
天蘭は黙ったまま洋介の手を引っ張ってその場から立ち去った。
「おいおい、なにするんだよ!!」
「フォッグ!!、出てこい!!」
テンペストは長らく閉じられていた扉を叩く。
扉を中からは不気味な機会音と笑い声が聞こえてきた。
「ムヒョ、ムヒョ。ウエザリオンを倒せってのかい?」
扉の中の声はより不気味だ。
「そうだ、いつまでも部屋にこもるな。そろそろ出てきて戦え。」
そう言い終わると同時に扉が開き、メガネをかけた不気味な怪人が出てきた。
「本気で倒して欲しいのか?」
「もちのろんだ。」
「では、主は一人で活動させてもらう。貴方たちの作戦は効率が悪すぎる。 ガイナイト!!」
そう叫びその怪人、つまりフォッグは鎧を着たガイノイドを呼び寄せた。
「ガイナイト、今から君はチキュウへ行け。私がアレを創っている間ウエザリオンの相手をしてやるのだ。」 フォッグがガイナイトに言う。
「御意。」
果たしてアレとは何なのか。そしてこの新幹部フォッグ一見馬鹿げた格好をしているが果たして…
第十一話「新幹部様 御誕生!!」
「何で剣の試練を受けさせようとしないんだ!! 何か喋ったらどうなんだっ!!」
天蘭が洋介の手を引っ張り黙ったまま『tomorrow』に戻って来たことに洋介は腹を立てている。しかし、今はそれより黙ったまま何も喋ろうとしないことに腹を立てている。
「おいっ!! なんで何にも言わねえんだよ!!」
「…。」
「ったく。もうイイ、一人で行く」
そう言って洋介は店を飛び出した。
天蘭は慌ててそれを追いかける。しかし、走って出て行った洋介は意外に速く店を出た時にはもういなかった。
「…、あのバカ」
良縁寺に向かって走っている途中洋介の頭の中は洋介が走るよりも、速く回転していた。天蘭があれ程本気で止めたのを見たのは始めてだった。何かあの剣には秘密があるのか?
「ウエザリオン!!」
不意に洋介を呼ぶ声がした。声のした方を見ると、中世の騎士のような鎧を着た男が立っていた。
「何だお前はっ!!」
「我が名はガイナイト。ウエザリオン、貴様を抹殺する為に参上した。」
「なにぃ、丁度いい、俺もイライラしてたんだ!! いくぜっ!!バリークッ!!」
【バリーク それは高山洋介がウェザーチェンジャーを使いガイアファイバースーツを光来する現象である】
「地球守護神ウエザリオン、光来‼」
洋介はお決まりのポーズで名乗りをキメる。
「ふっ、ではこちらも行かせてもらう。地獄のリング!!」
そう言ってガイナイトは片足を踏み鳴らした。すると、洋介とガイナイトを囲む様にプロレスでよく見るリングロープが地面から出現した。
「ふっ、これでお前と俺だけのデスマッチというわけだ。ハハハハハッ!!」
ガイナイトは高笑い。洋介は突如出現したリングロープを見回す。
「リングロープができたところで、何も変わるかっ!!」
洋介はガイナイトに殴りかかる。
その攻撃をスルリとガイナイトはかわす。
「ふっ、チェリーボーイが…」
「いっ、今それ関係ねぇだろ!!」
「ふっ、図星か…。 行くぞ!! 空烈魚雷っ!!」
ガイナイトは反対側のリングロープに向かい走って行き、ロープの反動を利用し自分の体を魚雷の様に姿を変え、洋介に向かって一直線に飛んできた。
「うおっ!! 危ねぇ。」
スルリとかわす洋介。
しかし、ガイナイトはかわされ突っ込んだロープの反動を利用し向きを変え、洋介に突っ込んだ。
BYUUUUNN!!
「ごはっ!!」
空烈魚雷が直撃し吹っ飛ぶ洋介。ところが、空烈魚雷の勢いはとどまることを知らず、フラフラと立ち上がった洋介に再び直撃。
「のあっ!!」
まさに今、洋介は逃げ場が全くない状況でピンボール状態である。
洋介は空烈魚雷の四度目のアタックによってついに、リング外に放り出されてしまった。
このような攻撃にをいく度となく受けた洋介の身体はボロボロだった。場外に放り出されてしまった洋介は倒れたままピクリともうごかない。
「ふっ、もう終わりか?チェリーボーイ。」
洋介はピクリとも動かない。
洋介を追って天蘭は走っていた。なぜ洋介が試練を受けようとしたのを止めたのか自分でも分からない。何かよく分からない感情が天蘭の体の中で渦を巻いていた。
「!!」
天蘭は道の真ん中に倒れている洋介を発見する。変身は既に解けている。至る所にアザができていて目の上などは、腫れ上がっていた。
「洋介っ!!」
天蘭は慌てて洋介を抱き起こす。
「洋介!! 洋介!! しっかりしてっ!!」
洋介はうっすら目を開ける。
「うっ…天蘭かっ…、早く…大空剣を…」
「何言ってんの!! 今は手当しないとっ!!」
「俺は…大丈夫だから。試練を受けなきゃ…」
「あんたねぇ!! 今の状況を考えなさいよ!! 」
「どうして…試練を受けさせたくないんだ?…」
「どうしてって…、もし試練を成功させないと…あんた死んじゃうのよっ!!」
「…、俺が…死んだら…嫌か?」
「…、当たり前でしょっ!!」
「なぜ?…」
「…、あんたのことが好きだからよっ!! 言わせんなっ!!」
「じゃあ、絶対死なない。」
「… しね…。」
奇妙な茶番が終わった後、「「おいっ!!」」天蘭は洋介を肩車して良縁寺に向かった。向かう途中、2人は一言も喋らなかった。
剣を前にした2人。最初に口を開いたのは天蘭だった。
「本当にやるの?」
洋介はコクリと頷く。
「じゃあ、剣を引き抜いて。」
洋介は大空剣に手を伸ばし、がっしりと剣の柄を握りしめ引き抜いた。
その瞬間、強烈な光が2人を包み込んだ。
「ここは?」
目を開けた時、2人は良縁寺の裏とは全く違うところにいた。
そこは、薄暗く真っ直ぐつづく道のような場所だった。上を見上げると、曇って不気味な空があり、左右にはかなりの高さの木の垣根があった。
「来たのね…無限回廊に…」
「むっ、無限回廊⁉」
つづく
次回予告
ついにきたッ!! 恐怖の無限回廊!! そこで待ち受けるものとは⁉ そして、新幹部の目的とは!!
次回 地球守護神ウエザリオン第十二話「テラ・サ・ヨ・ナ・ラ」