不動産の買い付け証明書が発行され、その宛名人である者が売り渡しの承諾をしたとして、それのみでは、売買契約が成立したとは認められないとされた事例(大阪地裁平成2年、4,26判例タイムズ725号162頁)



1:紛争の内容

・Aは、宅建業者Bに対し、Bより紹介のあった土地について「本件不動産を、代金6億4千万円で、昭和62年11月末までに買い上げることを証明します。」旨を記載した「買い付け証明書」を発行した。

・Bは、本件不動産を本件所有者Cから買い受けたうえ、Aに対し、「売り渡し承諾書」を発行し送付した。

・ところが、Aは、本件不動産の売買契約はまだ成立していないと主張し、売買代金を支払わないので、Bはやむなく第三者Dに本件不動産を代金5億円で売却した。

・Bは、上記により、売買契約は成立していると主張し、Aの、債務不履行ににより、買受代金6億4千万円とBの売却代金5億円との差額1億4千万円と遅延損害金の損害を被ったとして、Aに対し損害賠償を請求する訴訟を起こした。


2:本事例の結末

・判決は、本件不動産の売買契約は成立していないとして、BのAに対する損害賠償請求を棄却した。


参考

民法第555条

民法第1条第2項(信義誠実の原則)

・契約してきた者が突然契約を取りやめた場合過失ある一方当事者は、信義則上、相手方に損害賠償責任を負うという「契約締結上の過失」という理論がある。


以上