フィンガー5の進級進学が大問題!
学校へ行けないのが悩みのタネ・・・・・・
父の掟は、『落第したらやめさせる!』
『個人授業』100万枚突破、
新曲『恋のダイヤル6700』を発売してフィンガー5、厚い壁にぶつかっている。
全員の進学進級問題、住宅問題、ミュージシャンとしての方向、そして74年の大きな飛躍。
一家で明治神宮へ初詣し、「万時まとめて祈願する」というのだが――
一夫は高卒で経営者養成学校へ
堀越高芸能コースへ正男が挑戦
故郷沖縄をあとに、東京へ来て4年間。
どんなにつらくても涙を見せなかったフィンガー5が、ついにワーッと泣き出した。
『個人授業』100万枚突破と、新曲発売記念パーティーが開かれた12月4日のこと。
それまで一度も公式の席へ姿を見せたことがない父親松市さんが、この夜初めて晴れの場所へ出席したのだ。
「お父ちゃんは、ぼくたちが芸能界入りすることに反対だったんです。
でも自分の商売を犠牲にして、ぼくたちと一緒に本土へ来てくれました。
いつも陰で温かく見守ってくれたお父ちゃんが、“5人ともよく頑張ったな”と初めて褒めてくれて…」
泣いて歌った新曲『恋のダイヤル6700』
その発売日12月10日は竒しくも母久子さんのバースデーだった。
東村山の自宅でささやかな誕生祝いをした晩、松市さんは本土へ来て初めて祝い酒を飲んだ。
一夫も嬉しさのあまりジョニ黒をガブ飲みして二日酔い。
3男の正男は母に18金の指輪を贈った。
4男の晃は青い皮にラケットの刺繍がついた、可愛い靴をプレゼント。
「母ちゃん、いつまでも若くきれいにネ」と、甘えっぱなしのママを励ました。
一夫と2男の光男と、末っ子の妙子は7千円カンパして、これから何か贈物を買うことにしている。
「ありがとう、こんなに楽しいお誕生日は初めてよ。
みんなも身体に気をつけて、これからも仲良く頑張ってね」ママは涙ぐんでそう言った。
フィンガー5が爆発的な人気グループになったのは嬉しいが、最近は睡眠時間も平均5~6時間。
育ち盛りの子供たちには、随分キツイ。
お母さんはスタミナのつく沖縄手料理を食べさせているが、朝早い仕事のときは都心から遠い東村山の家まで帰れない。
当然、学校の出席日数もままならず、進級進学問題が心配のタネだ。
一夫はいまは堀越学園高校3年、最近授業参観があったとき、お母さんは担任の加藤先生に状況を聞いてみた。
「先生から“一夫君は仕事が忙しいのに、よく頑張って成績もいいので、3学期になるべく出席するよう努力すれば、大丈夫、卒業できるでしょう。
歌の方もしっかりやるように”といわれて、ホッとしたんです」
高校卒業後の方針は、本人がこういう。
「今まで親の財産を食いつぶしてきたので、これからは僕たちがうんと働き、恩返しの財産作りをしたいんです。
そのために、経営者を養成してくれる専門学校へと思っています。
長男の責任感に溢れている。
光男は大成高校2年だが、いちばん勉強家で成績も優秀。
1学期に出席日数を稼いだから、進級はまず心配ない。
東村山第二中学3年で、今度高校受験に挑戦するのは正男。
「ぼくは音楽のことで頭がいっぱい。
ほんとは調理師学校のようなところへ行きたかったけど、お兄さんたちが“高校だけは出たほうがいい”とすすめるんで、堀越を受けます」
頑張れば大丈夫と、中学の先生が励ましている。
晃と妙子は小、中学で泣き別れ
浪人禁止がお父さんの持論
フィンガー5の人気者。
晃と妙子は久米川小学校の5,6年生。
いつも一緒に学校へ往復しているが、妙子は寝起きが悪くて兄ちゃん泣かせ。
ママが「晃、遅刻するから先に行きなさい」と言っても、「いいよ、待ってるから」と優しいのだ。
あんまり仲がいいんで、近所のおじいちゃんが、「恋人みたいだねェ」と言ったら、「ちがうよ、妹だったら!」と、アーちゃんムキになった。
「だけどぼく、今度中学だろ。
妙子一人で学校へ行けるかどうか心配なんだ。
途中まで送ってあげたいけど、方角がちがうから困るんだよ」なんて妹思いでしょう。
この2人は、一夫の友達の兄さん(大学生)が家庭教師についている。
玉元家の子どもたちは、中学から高校にかけて果然背が伸びる。
一夫、光男、正男がそうだったが、まだ小学生の晃と妙子はクラスでもチビの方のトップを争っている。
気取ってメガネなんかをかけているが、アーちゃんも自分のサイズが泣きどころで、「ぼくに合うような小さい制服ってあるのかナ?
ダブダブで手が外へ出なかったら、カッコ悪いもん」とかわいい心配をする。
妙子は初め、オルガンの向こうに隠れて全然見えないミニサイズだったが、近頃やっと鍵盤の上からお茶目な顔が見えるようになった。
しかし中学上級までの我慢。
晃も妙子もそのへんでグーンと伸びるはずだ。
どうやら5人とも、進級進学が危ない気配はなさそうだが、もしドジふんだら大変。
お父さんの持論で、「勉強が好きなら、みんな大学まで行かせてやるが、もし途中で1回でも落第したらやめさせる。浪人はぜったい認めない」という掟。
うっかりしてはいられないのだ。
仕事と勉強のために新居さがし
近く沖縄へニシキを飾って・・・
次は住宅問題だが、今は借家が家族7人暮らしには狭いこと。
ファンが朝5時ごろからドッと押しかけるのが悩みのタネ。
前にいた九段のアパートは、バンド練習が近所迷惑となって追い出されたが、むろんその問題もある。
一夫はつくづく考えた。
「けっして贅沢は言わないけど、楽器もあるし人数も多いから、部屋が4つか5つは必要なんです。
それと、もう少し仕事に便利な都心の近くへ引っ越したいですね。
借家ではまわりに迷惑がかかるんで、借金しても自分の家を持たないと…。
便利になれば睡眠時間も余計取れるし、学校へ行きやすくなると思うんですよ」
しかし、現在自宅から近い会社に勤めているお父さんにとっては、逆に不便になる。
あちら立てれば、というやつだが、松市さんは割り切った。
「私は毎晩1時間ぐらい通勤時間が伸びても、どうというわけはない。子供たちが楽になればいいんだよ。
仕事と勉強を両立させるのは大変なことだからね」
引っ越してもファンが早朝かた押しかけては休まらないが、彼らの身を思ってもう少し自粛してほしいもの。
お母さんも電話の応待でくたくたになり、ダウンしてから番号を変えてもらった。
レコード会社の理解で、目下適当の家をさがしている。
74年の音楽活動については、“育ての親”のフォノグラム井岸ディレクターがこう言う。
「フィンガー5は、歌って踊って演奏ができ、しかも実の5人兄妹という珍しいグループ。
売れすぎてレッスンの時間が取れないのが残念だ。
ほんとうはLPで勝負させ、本格的なショーグループに育てて、テレビは週1回のワンマンショー番組を持たせたいと思っている。
これほど可能性を多く持つタレントはいないし、その期待に応えるだけの素質は恵まれているからだ」
ただひとつ、ボーイソプラノの晃がやがて変声期を迎えるはずだが、それまでの1年か1年半のうちに、エボックを画すような最高の仕事をさせたいと、作戦を練っている。
一夫としては「自分の作曲によるオリジナルLPを出したいこと。
許す限り地方へも行って、ファンに生のステージを見てもらいたいこと」が新年の抱負。
大晦日は、わりと仕事が早く終わるので、家族そろって明治神宮へ初詣に行き、「もっとレコードが売れて、お金が入って、家が見つかって、みんな進級進学できますように」と、祈願する。
来春には故郷沖縄へニシキを飾ることも決まったフィンガー5。
74年最高のホープとして、歌謡界を席巻する大ハリケーンになるだろう。
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こちらも、週刊誌の記事であります。
最後の画像は、署名の入れどころが難しかったので、ナシにしました。