晃と妙子のおしゃべりでつなぐ『フィンガー5物語』
ユウレイに思わずズッコケた!?
サトウキビ強奪大作戦
■美しい自然のなかでノビノビ育った沖縄時代
これから、ボクらフィンガー5のオハナシをはじめるよ。
もちろん沖縄の海や山で遊んだ楽しい思い出もいっぱいあるし、アニキたちの悪事(!?)もどんどんバラしちゃうんだ!
なーんでもしゃべっちゃうけど、アニキたち覚悟はいい?(晃)
はじめて許してくれた父
「ぼくたち、うれしいんです。
きょう父がここへきて初めて“おまえたち、よくがんばった!”と、ゆるしてくれました。
父はいままで、ぼくらが芸能界入りしたことに、ずっと反対でした。だから、うれしくて・・・・・」
長男の一夫がワーッと泣き出した。
12月4日、六本木で『個人授業』100万枚突破記念と、新曲『恋のダイヤル6700』発表をかねた、大パーティーが開かれたそのとき。
フィンガー5の父・玉元松市さんは、はじめておおやけの席へ姿を見せた。
故郷沖縄を、はなれてから5年。
お父さんは、5人のこどもの成長を見守りながらも、口に出してほめようとはしなかった。
こどもたちが芸能界の荒波を乗り切っていけるのか、けっして悔いはないか?
いままで甘やかさなかったのは、お父さんの愛情だった。
いま、その父が涙をうかべて、5人をゆるし、励ましてくれたのだ。
「沖縄を出るとき、成功するまでは2度と帰るまい。石にかじりついてもと、誓ったんです。これで、ぼくたち5人は、胸を張って沖縄へ・・・・」
一夫の声がとぎれる。次男の光男、三男の正男も、ボロボロ泣いている。
小さい晃と妙子は、どうしていいかわからない。
ただ胸がいっぱいで、わなわなとふるえていた。
会場はシーンと静まり返った。松市さんも目を瞬いている。
最後の歌のときも、一夫と光男は顔を涙でぐしょぐしょにして声が出ず、前列の正男、晃、妙子がけんめいに歌った。
アキラ「カズ兄ちゃんが、あんなに泣いたの、初めて見たよ」
タエコ「アーちゃんだって、ベソかいてたくせに!」
アキラ「ウソつけ!おまえ震えてたじゃないか。トイレ行きたいみたいに」
タエコ「カズ兄ちゃん、いきなりしゃべりだしたんだもん。あたしビックリしちゃった」
アキラ「“チビたちも、よくやってくれた”っていったとき、おれ、ホロっとしたぜ」
タエコ「はじめのうち、よく叱られたね“おまえたちはやめちゃえー”なんて・・・・」
アキラ「知らないの?愛のムチっていうこと」
タエコ「父ちゃんも、涙こすってたよ」
アキラ「アー早く、沖縄に錦を飾って帰りたいなぁー!」
椎の木から晃が落ちた!
フィンガー5の生まれ故郷は沖縄・具志川市の上平川というところ。
沖縄は米軍の基地だったが、きょうだいは自然を友として、のびのび育った。
家の近くには、山も川もある。
南国の夏は長いからこどもたちは上平川でよく泳いだ。
タエコ「兄ちゃんたちは、泳ぎうまかったけど、アキラはカナヅチだったね」
アキラ「なぬ?おまえこそ、キャアキャアこわがってたじゃないか」
タエコ「自分はいつも見物してたくせに!」
アキラ「あれは川岸でカントクしてたんだよ。事故が起こらないように・・・」
タエコ「いつか、ミッちゃんに足ひっぱられて、ブクブク川の中へ沈んじゃったね。
それっきり、なかなか上がってこないんだもん」
アキラ「ヤメロ!」
タエコ「ガボガボ、水飲んじゃってさ、アッハッハ」
アキラ「バカだなおまえ。あのときは、ちょっと潜水やってみたんだ!」
毎年、冬から春にかけて家の裏山へ椎の実をとりに行った。
猛毒のあるハブがいるというのにみんな半ズボン。
棒でヤブをたたきながら、椎の木のある山へのぼって行く。
アキラ「あの実を火でいためると、イモの味がするね」
タエコ「木にのぼる役はいつも、カズ兄ちゃんとアキラだったわ」
アキラ「兄ちゃんは太い幹にのぼるの。ボクは小さくて軽いから、細い枝のほうまでスイスイ」
タエコ「アタシが下で、セーターのすそ広げて待ってるの。
実がコロコロッて落ちてくる」
アキラ「いつも分担がきまってたね。
ミッちゃんとマーちゃんは、実がいっぱいある木をさがしてさ」
タエコ「いつか、枝がメリメリッと折れて、アキラが上からドッシーン!」
アキラ「おまえ、ケラケラ笑ったろ!」
タエコ「だっておサルみたいで、すっごくおかしかったんだもん」
アキラ「おケツの骨にズキーン!ときちゃって、オレもうダメかと思ったよ」
負けずぎらいの晃とヤンチャな妙子。
よくケンカしたが、ほんとはとても仲良しだった。
キャッ!ユウレイだぁ
家から小学校へ行く途中に、広い広いザトウキビ畑があった。そこまでくると、ナマツバが出てくる。
「兄ちゃん、ちょっと折っといでよ」
「よおし、待ってな」
サトウキビは丈が2mもあるので、晃や妙子には手が届かない。
上の3人が、ボキッ、ボキッと折ってくるのをもらい、チューチュー甘い汁を吸いながら学校へ行った。
沖縄の農家の人はノンビリしてるから、たまに見つかっても、「わらばぁ(こどもたち)もうするんじゃねえぞ」と、笑ってるだけだ。
キビとりに夢中で、学校に遅刻しても、先生は別に叱らない。沖縄はチビッコ天国みたいだ。
春と秋、刈いれがすんだあとの広い畑にこどもたちがあつまり、かんで汁を吸ったキビの穂を投げ合って戦争ごっこをする。それもみんなの楽しみだった。
アキラ「いつか夜中に、刈りいれたサトウキビの束を盗みん行ったろ。
トラックの荷台にうんと積んであってさ」
タエコ「下の3人が見張りしてね、カズ兄ちゃんとミッちゃんが、抜き足差し足でそおっと・・・」
アキラ「イタズラ大作戦!手をかけたとたんコラーッ!と見つかっちゃって大脱走!」
タエコ「アタシが転んだら兄ちゃんがネコみたいに首根っこつかんで、ワーッと逃げたの」
アキラ「2度目にやった時は、うまくいった。それ担いでお墓のとこまできたらさ」
タエコ「いやーん、こわいからヤメテ!」
沖縄のお墓は、コンクリートで家のようにできている。
その中はまっくらで死人を埋めた土まんじゅうがいくつも並んでいるのだ。
入口に近づくと、中からヒヤーッとした、ウス気味悪い風が、吹いてくる。
ちょうど道端にあったお墓の前を通りかかったとき、「うわっ!あ、あそこに白いものが!?」
一夫と光男が腰をぬかしサトウキビの束をぶん投げて、いちもくさんに逃げ出した。
タエコ「私たちには見えなかったよね。白いものってユーレイ?」
アキラ「兄ちゃん達、悪いことしたから、罪の意識にオノノイたのさ」
タエコ「ギャッ!て、すごい声だしたよ。真っ青になって震えてたもん」
アキラ「おまえは、強いよ。女の子なのに、トカゲのしっぽつかんでブンブンまわすんだからな」
タエコ「へえだ。自分だって、ヘビ取りが好きなくせに!」
エレキに魅せられた
きょうだいで一番早く音楽づいたのは正男だった。
3つのとき、那覇市で開かれたツイスト大会に出て、大人たちを相手にみごと優勝!
父が経営するクラブのベース奏者から、楽器の手ほどきを受けたのが6歳。
一夫と光男に、「兄弟バンドを作ろうよ。楽器を買ってもらってさ」とケシかけた。
それからはホウキのギター、モップのベース、洗面器のドラムで、ひまさえあれば、カンカン、ガタガタ!
お父さんは、「いかん、勉強第一だ!」と反対だったがさいそくに根負けしたお母さんが、ある日、3人を町の楽器店へ連れて行った。
だが、その場では買わないフリして、ギター、ベース、ドラムの3点セットを自宅へそっと配達してもらった。
1週間ほどたってお母さんが、「一夫、光男、正男。よく勉強するなら、これをプレゼントしてあげるわよ」と、納屋をガラッとあけて見せた。
そこにはピカピカの楽器があって、3人はびっくりぎょうてん!
タエコ「兄ちゃんたち、とびあがって大喜び。それから応接間をレッスン場にして、毎日エレキギターをテケテケテケ・・・・・」
アキラ「あれ、ベンチャーズだろ。
『ダイヤモンドヘッド』『パイプライン』なんて、マー兄ちゃんがどんどんコピーしちゃって」
タエコ「アタシたちはチビだったから、仲間に入れてくんないのネ」
アキラ「レッスン場のぞきに行くと、“チビはじゃま!”なんて追い出された。
あのウラミ、忘れないゾ」
タエコ「3ヶ月、猛練習して、沖縄テレビの『ワンダフル・ショー』に出たら、奇跡の優勝!」
アキラ「やるねェ!
いまじゃフィンガー5は、このボクでもってるんだけど」
音楽の恩師新里先生もびっくり。
テレビのスタッフから、「東京へ行って本格的に勉強しては・・・・」とすすめられ、一夫は両親に許しを求めた。
ところが、お父さんは大反対、お母さんはオロオロ。
そう簡単に沖縄を離れられるわけがない。
でも一夫たちはあきらめず、「死にものぐるいでがんばるよ!
このチャンスを逃したらもう2度とめぐってこないかも知れないんだ。たのむよ、お父さん!」と、ねばりにねばった。
43年早春のこと。晃は小学1年、妙子はまだ5つ。
このときは歌も楽器も習っていなかった。(つづく)
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これは、連載記事なので、“つづく”となっております。
この先はまだ持っていないので、
そのうち・・・・ね。w
今回の記事は、フィンガー5の基本情報でしたね。
よぉ~く、目にするお話でありました。
晃と妙子のおしゃべりが、楽しくて面白いですね♪
この連載記事、かわいい写真がたくさん載ってて最高なんですよぉ~!