子熊が教えてくれたこと・東山動物園 | To Neverland

子熊が教えてくれたこと・東山動物園

たとえば

鯨が浜に迷い込んだ



懸命に誘導し沖へと導く

元気に泳ぐ姿を拍手と笑顔で見送る





川にアザラシが現れた

土手には見物の人垣

愛称までついて

マスコミは過熱気味に報道し

ついにアザラシは住民票まで手に入れた





イルカが迷い弱っている

水族館から駆け付けた職員たちが

懸命のレスキュー





動物園で生まれた子熊なら

愛くるしい仕草に歓声が上がる



自然に生まれたコは

同じ子熊なのに

殺された



水族館は来るのに

動物園は なぜ 来ない



檻に閉じ込められて

弱っているか なぜ 気にしない

檻を移すにも なぜ 来ない



一時預かりでさえ

一時とはいつまでかと繰り返す



動物と暮らす者の心とはほど遠い問いに

どんな答えを言えばよかったのですか





動物が好きだから

動物といたいから

その仕事を選んだのではないのですか



現場から

遠すぎるとは言えない距離にいて

あなたたちは 何も 感じてはいないのですか





東山動物園


そこで私は動物園が大嫌いになりました



幼い頃に目にしたチーターは

大人になって見た時も

あまりにも狭すぎる檻で

数歩で歩きつく右の端と左の端を

永遠かと思うほど

繰り返し行ったり来たりしていました



すぐ隣の檻のコも

その隣の檻のコも

猫科の檻が並ぶ数だけ

行ったり来たりが並んでた



その身体を被う毛は

パサパサに乾いた艶など一光りもなく

砂漠の草の方がみずみずしいであろうほどに

荒れ果てて



首はうなだれ

瞳はうつろに

まるで

澄んでいる水に無理矢理牛乳を溶かしたよう





そんなことさえ

平気でいられる心に



どこから来たかも分からぬ子熊の命など

たかだか だったのでしょうか





地球のおヘソと呼ばれる大きな岩のある国から来たVIPとは大違いですものね





たかだか 子熊一頭 ですものね







それでもね



命 なんですよ






あのコ


命 なんですよ








あのコの命だったんですよ