ツレとその彼女と久しぶりに飯を食った。



俺たち三人は大学の同級生で、会うのは卒業式以来だ。



彼らは金沢旅行に来ていた。



香林坊で待ち合わせをして近所の居酒屋へ入る。



全員社会人一年で、案の定話題は仕事のことだ。



ツレは会社に過労を強いられ、相当疲弊していた。



朝5時20分に起きて、帰りは23時前。



土曜は休みなしで、週6日がこの繰り返し。



彼女と結婚を考えてはいるが、仕事のストレスを散財で発散してしまうから貯金もない。



そのうえ遠距離恋愛という特典まである。



彼女も彼女で地方に配属され、夜勤まであるもんだから、二人の生活リズムは完全にすれ違い状態だ。



愚痴をこぼすツレに、不安そうになだめて結婚のための貯金を心配する彼女。



俺も人のことなんか言っていられない。



明日は我が身と思いながらテーブルの向こうの男女を眺める。



かつて俺たちにも人生の夏休みがあった。



目の前には真夏の海があり、浜辺にはヤシの木が立ち並び、その下で小麦色に日焼けした女の子たちがフラダンスを踊っていた。



そんな毎日が確かにあったのだ。



今俺たちは暗闇の中にいる。



二度と明けないかもしれない夜の中をただひたすらに走り続ける。



微かに見える月の方向を目指して。



最後に目的地に辿り着くのかは分からない。



今はそれしかできない。



考えるのはもうやめた。



今日を生きることに夢中になろう。



月はどっちにでている、、、?