東日本大震災から約2か月後に、宮城県南三陸町に10か月限定で設置された災害ラジオ局の活動を追ったドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」で、過剰とも取られかねない演出があったことが分かった。

 津波で娘と孫を失った女性がラジオ放送「FMみなさん」を聴いているシーンは実際には、映画スタッフが、用意したラジオ放送の録音CDを女性に聴かせていた。


 同作は大手広告会社の博報堂などの企画制作で、放送作家の塚原一成氏と同社社員の梅村太郎氏が監督を務めた。自らも被災者である同ラジオのスタッフが、被災した人々を元気づけようと奮闘する姿を追った。2013年春に公開され、現在も各地で自主上映会が続いている。


 博報堂広報室によると、この女性は70歳代で、町内の仮設住宅で暮らしていた。映画の中では「いつも聴いている」と話しているが、女性宅には同ラジオの電波が届いていなかった。女性から「音がなくて寂しく、夜も眠れない」と聞いた撮影スタッフがラジカセを持ち込み、同ラジオの放送を録音したCDを聴かせたという。しかし、作中で録音であることなどの説明はなかった。


 博報堂の藤井慶太広報グループマネジャーは「演出の一つであり、『やらせ』とは考えていないが、ドキュメンタリーとしてどこまで許されるのかを考えなければならなかった」と話している。






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