昨日、友人と特別展示を観るべく一緒に美術館に行った帰り、
ふと立ち寄った書店にヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」が文庫本コーナーにデカデカと平積みされてあり、クジャクヤママユの描いた表紙を見て内容を思い出し何とも言えない気持ちになった。
蝶、蛾集めが趣味の貧乏な主人公が、自分よりも出来るいけ好かない模範少年のコレクションを持ち出した挙句潰してしまい、罪悪感から謝ったところ軽蔑的な眼差しで冷たくあしらわれ、償いに自身のコレクションをすべて指で潰すといった話で、中学の教科書に載っていることが多く知っている人も多い気がする。
(僕が使っていた教科書には載っていなかった。)
読んだ当初はただ暗い気持ちに陥ったが、今思うと主人公のように「盗んでしまいたいほど素敵なもの」を見つけられなくなっている自分が居て歳を取ったことを実感した。まぁ、この歳になって盗もうと思う気持ちがあればそれはそれで異常であるが。
ヘッセほど翅脈を水晶やダイヤに例えるなどの美しい描写をすることは到底出来ないが、好きなチョウ、ガについて少し書いておく。と言っても基本甲虫(しかもクワガタメイン)の素人に毛が生えた程の知識しかなく、語っていいのか少々不安に思ったりもするが。
海野和男氏の「世界一美しい蝶は何か」と言う図録を見たことがあるが、結局言ってしまえばナンバーワンではなくオンリーワンなのだと思う。ここに限った事ではなく、すべての事にこのこの言葉を投げかけて何もかもが丸く収まれば優劣など誰も付けない。現実は非情である。
好きなチョウで言えば、シンプルな表面に対して裏に派手な模様を持つカザリシロチョウで特にDelias niepeltiの黒を基調に、前翅根元の山吹の紋、墨入れをしたように後翅の脈に沿って入った白のモダンなデザインが大変気に入っている。
こちらがDelias niepelti (和名はイトスジカザリシロチョウと言うらしい)
どこかマルマンのスケッチブックの表紙っぽくも見えるのは自分だけだろうか。
パキッとした配色が標本箱の地や周りの標本も引き立てているのは確かだが。
裏だけでなく、表の白にバランスよく縁取りされた黒のシンプルな格好よさもなかなか魅力的だったりする。
好きなガで言えばイボタガかと。美しい木目のような模様もさることながら、刺々しい外見をした幼虫の造形も大変格好いい。大した行動力も無く、グーグル検索で世界を見ているだけの自分だが、こんな美しいガが海外だけでなく日本にも種がいると思うと感動させられる。
ベトナムのものがこちら(写真右下)
後翅根元の茶色から黒のグラデーションが翅全体を年期の入ったケヤキの一枚板のように味わい深くしている。
ガはチョウに比べて胴に厚みがある種を見ることが多いのもあってか、直感的に見ても翅だけでなく胸や腹のフワフワした感じが目に入ってくるのも魅力の一つかもしれない。
他にも好きなチョウやガがいるが、画像と自身の表現力や個人的な魅力を伝えるための語彙力がないことから割愛する。もう少しマシな文になるかと思っていたが、なかなかのありさまでここまで書いたのを見返して笑えてきた。
「驚くことに始まり驚くことに終わる」とヘッセは言っていたし、驚きを持つことは永続的で意義深いなにかがあると、センス・オブ・ワンダーの中でレイチェル・カーソンも言っていた。
小さい頃に驚くことが少なかった訳ではないが、それでも今になって足りなく思ったりもする。
そう思える程度に、まだまだ気持ちは鼻タレ小僧で居るのでこのまま頑張ってみよう。うん。
文庫 少年の日の思い出 (草思社文庫)/草思社
¥756
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蝶 (1984年)/朝日出版社
¥1,598
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センス・オブ・ワンダー/新潮社
¥1,512
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ふと立ち寄った書店にヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」が文庫本コーナーにデカデカと平積みされてあり、クジャクヤママユの描いた表紙を見て内容を思い出し何とも言えない気持ちになった。
蝶、蛾集めが趣味の貧乏な主人公が、自分よりも出来るいけ好かない模範少年のコレクションを持ち出した挙句潰してしまい、罪悪感から謝ったところ軽蔑的な眼差しで冷たくあしらわれ、償いに自身のコレクションをすべて指で潰すといった話で、中学の教科書に載っていることが多く知っている人も多い気がする。
(僕が使っていた教科書には載っていなかった。)
読んだ当初はただ暗い気持ちに陥ったが、今思うと主人公のように「盗んでしまいたいほど素敵なもの」を見つけられなくなっている自分が居て歳を取ったことを実感した。まぁ、この歳になって盗もうと思う気持ちがあればそれはそれで異常であるが。
ヘッセほど翅脈を水晶やダイヤに例えるなどの美しい描写をすることは到底出来ないが、好きなチョウ、ガについて少し書いておく。と言っても基本甲虫(しかもクワガタメイン)の素人に毛が生えた程の知識しかなく、語っていいのか少々不安に思ったりもするが。
海野和男氏の「世界一美しい蝶は何か」と言う図録を見たことがあるが、結局言ってしまえばナンバーワンではなくオンリーワンなのだと思う。ここに限った事ではなく、すべての事にこのこの言葉を投げかけて何もかもが丸く収まれば優劣など誰も付けない。現実は非情である。
好きなチョウで言えば、シンプルな表面に対して裏に派手な模様を持つカザリシロチョウで特にDelias niepeltiの黒を基調に、前翅根元の山吹の紋、墨入れをしたように後翅の脈に沿って入った白のモダンなデザインが大変気に入っている。
こちらがDelias niepelti (和名はイトスジカザリシロチョウと言うらしい)
どこかマルマンのスケッチブックの表紙っぽくも見えるのは自分だけだろうか。
パキッとした配色が標本箱の地や周りの標本も引き立てているのは確かだが。
裏だけでなく、表の白にバランスよく縁取りされた黒のシンプルな格好よさもなかなか魅力的だったりする。
好きなガで言えばイボタガかと。美しい木目のような模様もさることながら、刺々しい外見をした幼虫の造形も大変格好いい。大した行動力も無く、グーグル検索で世界を見ているだけの自分だが、こんな美しいガが海外だけでなく日本にも種がいると思うと感動させられる。
ベトナムのものがこちら(写真右下)
後翅根元の茶色から黒のグラデーションが翅全体を年期の入ったケヤキの一枚板のように味わい深くしている。
ガはチョウに比べて胴に厚みがある種を見ることが多いのもあってか、直感的に見ても翅だけでなく胸や腹のフワフワした感じが目に入ってくるのも魅力の一つかもしれない。
他にも好きなチョウやガがいるが、画像と自身の表現力や個人的な魅力を伝えるための語彙力がないことから割愛する。もう少しマシな文になるかと思っていたが、なかなかのありさまでここまで書いたのを見返して笑えてきた。
「驚くことに始まり驚くことに終わる」とヘッセは言っていたし、驚きを持つことは永続的で意義深いなにかがあると、センス・オブ・ワンダーの中でレイチェル・カーソンも言っていた。
小さい頃に驚くことが少なかった訳ではないが、それでも今になって足りなく思ったりもする。
そう思える程度に、まだまだ気持ちは鼻タレ小僧で居るのでこのまま頑張ってみよう。うん。
文庫 少年の日の思い出 (草思社文庫)/草思社
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