ふせる・うつむく | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

前回は後ろ姿の作品を並べてみました。
顔の見えない人物の絵画シリーズ続編・・・ということで、
今回はうつむく人たちです。
ポージングの都合上、どうしても重い・暗い・憂鬱な作品が
中心になってしまいますが、気にせず並べてみます(笑)。
伏せる・うつむくポーズ、意外とおもしろい作品もあります。


・傷ましき腕/岡本太郎

傷ましき腕

昭和を代表する日本の画家、岡本太郎の有名な初期作品です。
後年の奔放な作品ではなく、具象的な作品ですが、
それでも独特の雰囲気に溢れていて、すごく好きな作品です。
中央に巨大な赤いリボン、腕だけが見える人物が伏せているように見えます。
(実際はリボンと腕だけが描かれているのかもしれませんが、
人物が下を向いているようにもみえます。)
元々は1936年にパリで制作された作品ですが、その後焼失し、
現存するのは後に再制作されたものなのだそうです。
1936年といえば226事件の年、日中戦争の前年です。
その後の暗い時代を予感するかのような作品。


・理性の眠りは怪物を生む/ゴヤ

43.理性の眠りは怪物を生む

18世紀末~19世紀初頭のスペインの画家、
ゴヤの版画集「ロス・カプリチョス(気まぐれ)」からの一枚。
中央の人物はゴヤ自身であると言われています。
机の上に伏せるゴヤに向かって、コウモリやらフクロウなどの
夜の生き物が迫り来る・・・。
ゴヤの「ロス・カプリチョス」は、画家の奇怪な想像力に溢れた連作です。
真横のフクロウはペンを持っています。
ゴヤに対し、「さあ描け!」と迫っているように見えます。


・吸血鬼/ムンク

吸血鬼

うつむく男の首筋に、やはりうつむく女の子が噛みつく・・・。
噛みついている姿が血を吸っているようにみえるため、
この絵は「吸血鬼」と言われていますが、
元々は単に二人の男女が抱き合っている絵である、との話もあります。
ムンクは19世紀末~20世紀初頭のノルウェーの画家。
「叫び」など、強烈な印象と色彩で自己の内面を表現したような
表現主義の画家であると言われていますが、
ムンクの特集展示などで様々な作品を見てみると、
意外と明るく健康的な(?)絵が多いことに気付かされます。
「叫び」もこの「吸血鬼」も、少し見方を変えると
丸みのある曲線の組み合わせが心地よい、
温かい作品にも見えてくる気がします。


・重い手/鶴岡政男

重い手

鶴岡政男は岡本太郎とほぼ同年代の日本の画家です。
有名な作品は少ない(気がします)ですが、
この一枚「重い手」は非常に強烈な作品。
うつむく人物は、身体に反した巨大な手を持っており、
さらにより巨大な手が彼の背中にものしかかる・・・。
この絵は1949年の作品。戦後4年目です。
敗戦の重荷が、戦後日本に大きくのしかかる・・・。
そんな印象を感じさせる作品。
個人的に、冒頭に挙げた戦前の「傷ましき腕」とセットで
思い出してしまう作品です。


・待ち時間/ドガ

待ち時間

踊り子の画家、ドガから一枚。
ドガは踊り子の様々なポーズを描いており、
個人的にドガの描く人物の身体が好きです。
うつむく踊り子、疲れているのでしょうか・・・。
左足の足首を痛めてしまっているようにも見えます。
なお、フランス語の「待ち時間」には、「期待」という意味もあるのだそうです。



以上、うつむく人たちでした。

生きていると様々な悩みや苦しみに囚われるもの。
しかし、悩んでいる時間は将来への準備期間。
「待ち時間」は「期待」でもあるのです。
・・・と無理やり明るく〆させて頂きます・・・笑。