社会を考えてみる(1) 自殺統計 | れぽれろのブログ

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先月、衆議院が解散されました。
まもなく総選挙ですね。
ということで、たまには真面目に(?)政治や社会のことについて書きます。

・・・といっても自分はテレビを全然見ませんし、新聞も読みません。
どんな候補者がいて今どうなっているのかなんて全然知りません。
そもそも自分はいわゆる「政局」というものにはとんと興味がない。
しかし、あれこれぐにゃぐにゃと考えたりすることは好きですし、
社会が良くなればよいとは思っています。
選挙で世の中が変わるかどうかは別にして、
選挙を機会に社会のことをあれこれ考えることは良いことだと思うのです。

また逆に、日本がどういう社会であるかを考えずに、投票だけ行く
というのは非常に問題であるとも思います。
問題意識がないなら投票しない方がマシ・・・というのは言いすぎでしょうか?
利益配分だけをあてにして投票する、というのも何だか間違っている気がします。

日本がどういう社会であるかということは、
各種統計などから考えることができます。
とくに、OECDやWHOなどの国際比較統計は、日本が他国に比べて
どこが異なっているのか、どういう特異値を持っているかを知ることができます。

統計データなど、多くの方が分析されておられるので
今さら自分などがブログに書くことでもないとも思いますが、
それでも問題は問題、声を上げる人が多ければ多いほどよい・・・。


ということで、いきなり暗い話で申し訳ないですが、自殺の話をします。
自殺統計から社会を考えてみると、いろんなことが見えてくる気がするのです。

なお、統計データはすべて、「社会実情データ図録」のページからお借りしました。
(URLはリンク元です。)

・自殺率の国際比較

自殺率の国際比較

WHOの統計です。
2011年時点で日本は世界で8番目に自殺率の高い国。
非常に高い値です。
上位にある国は、ほとんどが旧社会主義国。
その中で、日本と韓国は旧西側諸国の中で
突出して高い自殺率となっていることが分かります。


・近年の日本の自殺者数の変化

自殺者数

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2740-2.html
続いて日本の警察庁及び厚生労働省の統計です。
1998年から、異常に自殺率が上昇しています。
前年の97年の自殺者数が約2万4千人。
この年まで、基本的にずっと数字は2万2千人前後。
そして98年は約3万2千人に増えます。
以降、現在までずっと3万2千人前後です。

このグラフから、1997~1998年の1年間で、日本社会の何かが
根本的に変わったということを現わしているように見えます。
何だか怖いグラフです。


・自殺率の長期推移

自殺率の長期推移

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2774.html
厚生労働省、OECD、WHOの統計を複合した資料です。
日本は戦時中が低く、戦後は1950年代の一時期上昇しますが、
基本的に、だいたい10万人あたり15人~20人くらいで推移していました。
そして、1998年以降、ずっと高いままです。
他国では、ハンガリーがかなり特異な値を示しています。
ロシアも増減が激しく、韓国の急増も特徴的です。


自殺の原因は一口では言えません。
経済苦、病苦、家族や大切な人を失うこと、その他仕事がつらいとか、
いじめや暴力などが原因として挙げられると思います。
また社会や生活の構造が変わってどうしてよいか分らなくなるというような
ケースもあるようです。

自殺の原因は単一ではなく、複合的なものだと思います。
経済的に辛くても、いじめにあっても、
親しい人のサポートがあれば生きていけるかもしれません。
逆に、家族に迷惑がかからないようにするために自殺するという
ケースもありそうです。
日本の場合、中小企業などの法人の債務に対し個人に責任が及ぶこと、
連帯保証人制度の問題、生命保険の問題など、
法的に改善の余地のある問題があると思います。

ロシアを含む旧社会主義国で自殺が多いのは、経済的な問題もありますが、
冷戦体制終了後の体制変更に伴う混乱が大きそうです。
韓国は80年代まで親米の軍事独裁政権であり、
80年代後半に民主化したような国なので、
旧社会主義国と傾向が似ているのかもしれません。
(もちろん経済的な問題も大きいと思いますが。)
その中で、ずっと自由主義国家であったはずの日本が
特徴的な増加を示していることは、解明すべき問題であると思います。

98年の日本の増加の理由については、
前年(1997年)の消費税の増税、アジア通貨危機の発生により、
景気が非常に悪かったこと。
そして80年代末のバブルの清算のため、
いくつかの金融機関を破綻させる政策を取ったこと。
これに伴い銀行が引き締め政策を取ったこと。(貸し渋り)
このことにより、中小企業の経営者や自営業を中心に
資金繰りがうまくいかず、自殺に至る、といったことが言われています。
しかし、以降ずっと高いままということは、理由はこれだけではないはずです。

いずれにせよ、自殺の問題は政治的に解決すべき問題であると
自分は思います。
自殺は「死にたい人間が勝手に死んでいる」といった問題ではありません。
ある社会で自殺が増えるということは、その社会の中の特定の人に
苦しみのしわ寄せが及んでいるということです。
このしわ寄せを解除してやるのは、政治の役割、
すなわち有権者である我々の役割です。
自殺をするということは、死よりも大変な苦しみがあるということ。
この苦しみをできるだけ緩和するためには、
再配分・制度変更は肯定されるべきだと思います。
制度変更を行うと損をする人が出てくるかもしれない。
しかし、誰かが死ぬことを考えれば、必要な制度改革は
実施されるべきだと思います。


ということで、せっかくの選挙期間中なので、しばらくの間
社会問題についてあれこれ書いてみようかな、なんて考えています。