アンドレ・ケルテス | れぽれろのブログ

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たまには写真家を取り上げてみます。

アンドレ・ケルテスは19世紀末のハンガリー生まれ。
ユダヤ系ハンガリー人のため、20年代ハンガリーの反ユダヤ政権樹立に伴い
パリにやってきます。
しばらくパリで生活しますが、30年代にアメリカに移住。
その後第二次世界大戦が勃発してパリに戻れなくなり
その後の一生をアメリカで過ごすことになります。

ケルテスの写真は画面構成が楽しいです。
20世紀前半の抽象芸術やキュビスムなどの影響もあるように見えます。
(パリでは抽象画家やキュビストとの交流もあったそうな。)
しかし、構成的・演出的な写真は(無いことはないですが)少なく
どちらかというと自然で叙情的なストレートフォトが多い気がします。
にもかかわらず、画面構成が不思議と楽しいのがケルテスの面白いところ。

以下に写真を並べてみます。

有名な写真です。
階段・壁・花瓶・帽子・・・丸と四角の組み合わせ。配置が楽しいですね。
この写真は画家のモンドリアンの家で撮られたそうです。
幾何学的な雰囲気がモンドリアンの抽象画の雰囲気にも似てる気がします。

女の人のポーズと左のマネキンの配置が心地よい。

エッフェル塔の下。
ケルテスは高所から撮影した楽しい構図の作品も多いです。

Carrefour
同じく高所からの撮影。
差し込む光と人物・乗り物の配置が絶妙。

Distortion1

ディスト―ションのヌードシリーズから。
一時期こういう演出的な(?)写真も撮影していたようです。

Distortion2

同じくディスト―ションシリーズから。
このあたりはシュルレアリスムの影響もありそうです。

新聞に乗っかって新聞を読む少年。
可愛らしくて好きな作品。

こういうユーモラスな雰囲気の作品も。

路上の表示と傘の群れの組み合わせが楽しい。
この写真は東京で撮影されたようです。

これもユーモラスな感じ。
どうでもいいですが、この写真を見ると
岡本太郎の「痛ましき腕」を思い出します。
30年代後半の作品なので、制作時期もほぼ同じ。

チューリップとコップの楽しい組み合わせ。
ちょっと寂しげな雰囲気も良し。


なお、ハンガリー人は姓→名の順序(日本と同じ)で表記されるので、
ハンガリー読みだと"ケルテース・アンドル"が正しいようですが、
一般的に親しみのある(?)フランス風の"アンドレ・ケルテス"表記で
統一しました。

ちなみに、ハンガリーってどういう国なのか自分はあまり詳しくないですが、
なぜか写真家で有名な人が多いような気がします。
ケルテスの他、ロバート・キャパがそうですし、ブラッサイもいます。
バウハウスで活躍したモホリ・ナギは写真も撮りましたが、彼もハンガリー出身。
あとピアニストでも割と思いつく人がいますので、
自分の中では、ハンガリー=写真とピアノという(勝手な)イメージがあります。

さらに余談ですが、有名な指揮者イシュトヴァン・ケルテスもハンガリー人。
ケルテスと聞いてアンドレかイシュトヴァンかどちらを思い出すかで
その人の趣味が分かったりしますね。