寒山拾得 | れぽれろのブログ

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前回は渋いフリードリヒでしたので、今回は奇怪なものを。

寒山と拾得は中国は唐代の僧。
非常に風変わりなお坊さんだったようで、後年様々な絵画に描かれます。
たいていは奇怪な風貌で、なんとなく汚らしい服装で描かれています。
そして、怪しげな笑い顔で描かれることが多いですね。

巻物を持つのが寒山さん。
箒を持つのが拾得さん。
寒山は文殊菩薩の化身、拾得は普賢菩薩の化身と言われることも。
昭和初期の歌謡曲「蘇州夜曲」(←なぜか好きな歌です)に、
「鐘が鳴ります寒山寺」という歌詞がありますが、
この寒山寺が寒山にゆかりのあるお寺のようです。

自分は子供の頃に、禅宗美術の本で顔輝の寒山拾得図を見て、
たいへんなインパクトを受けました。
何なんだこの顔は!
禅宗美術は比較的地味なものが多く、子供のころはよく分らなかったのですが、
その中で異彩を放つ絵画、この顔輝作の寒山拾得図だけは
何だか分かりませんが、変に好きになった絵の一つです。
で、自分の中では、禅宗絵画=寒山拾得という
誤った(?)インプットがなされることになります。

ということで、寒山拾得の絵をいろいろと集めてみました。


・寒山拾得図/顔輝

寒山拾得(顔輝)

顔輝は南宋の画家。
左が拾得さん。右が寒山さん。
なんとも不敵な笑顔です。
自分が昔に見た画集では、この全体図とともに、
わざわざ2ページ見開きで顔だけ拡大した部分図も載っていました(笑)
この画集の編集者は、よっぽどこの絵が好きだたっとお見受けします。

・寒山拾得図(部分)/顔輝

寒山(顔輝)部分

ということで、顔だけ拡大。意味はありません。
個人的かつどうでもいいことですがこの寒山の方の顔、
昔の近所にあった小児科の看護婦さんによく似ていました(笑)
こんな顔で受付から名前を呼んでくれます(笑)
その後、小児科に行くたびに寒山を思い出すということに陥ります。

・寒山拾得図/曾我蕭白

寒山拾得(蕭白)

曾我蕭白は18世紀京都の人。
かなり奇怪な絵をたくさん描いた人で、個人的に好きな画家です。
で、そんな蕭白が寒山拾得を描くと、
奇怪に輪をかけて奇怪になります。
左が寒山、右が拾得。
怪しすぎる風貌と身なり、人間とは思えない手足・指先。
京都国立博物館が所蔵している作品です。

・寒山拾得図/周文

寒山拾得(周文)

周文の寒山拾得図。
顔輝や蕭白と比較すると、いくぶん可愛げがあるようにも見えてきます。

・寒山風麗子像/岸田劉生

寒山風麗子像

大正・昭和初期の洋画家岸田劉生は、
自分の娘:麗子の肖像をたくさん残しました。
その中の一枚。寒山のように描かれた麗子ちゃん。
岸田劉生は割と画風がコロコロ変わる画家です。
麗子ちゃんの絵も、写実的な絵から奇怪な絵まで
様々なバリエーションがあります。
(どちらかといえば奇怪なものが多いですが・・・)
で、この絵は劉生が古い東洋美術に傾倒していた頃の作品。
我が娘をこんな顔で描くというのもすごいですね(笑)。

・見立寒山拾得図/鈴木春信

見立寒山拾得

18世紀後半に浮世絵(錦絵)美人図をたくさん残した春信。
奇怪な寒山拾得図も、鈴木春信の手にかかれば、なぜか美男美女に変身します。
春信は古典を現代(江戸時代)に置き換えたような「見立図」をたくさん描きました。
どんな画題でも(寒山拾得図でさえも)無理やりカップルに置き換える春信さん。
面白いですね。


奇怪な禅宗絵画と言うと、「寒山拾得図」以外にも、
「蝦蟇鉄拐図」のガマ仙人などもあります。
これについてはまた次の機会に。