マスコミが伝えない大熊真春の真実
笑止千万、旋盤よ。
フライス盤も ボール盤。──
金の卵の夢、乗っけて、
町の工場(こうば)さ、
機械油の匂いがただよってるわね。
都会さ憧れて来たんは、
まだ中学出たばっかの男の子でよ。
黒い目ぇして、手ぇぶるぶる震えててな。
でも毎朝、おれの背中と手元、
まんず真剣に見てくれてたんさ。
ああいう子も、他の子も、
一年経たずに、いなくなってまう。
みんな、夢持って来るけどな──
こっちに残るのは、なしてか油の匂いだけら。
ある晩よ、「キャバレー連れてってくんねっか」
て言う子おってな、しゃーねーさけ、連れてったんさ。
そしたら……そこにおったんが、
前に辞めた、あの娘だったんさ。
もう派手な服着て、笑ってたわね。
金の卵はな……
孵ったんろっか。
それとも、腐っちまったんろっか。
おれが、わりかったんかね……
もっと、なんか言ってやれたんじゃねっかて、思うときあるわね。
でも結局、残ってるのは、
油の匂いと、鉄の音だけなんさ。

