「宇宙を“戦場”にしてはならない〜中国・ロシアのトランプ大統領非難に思うこと」
5月8日、モスクワで会談した中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は、アメリカのトランプ大統領が推進する「米国版アイアンドーム」構想を、そろって非難しました。
彼らはこの構想を「宇宙の軍事化」「世界の不安定化」につながるものだと位置づけています。
しかし、この報道を見て私は強く思いました。
本当に宇宙を“戦場”にしようとしているのは、誰なのか?
以下の記事をご覧ください。
『ロシアと中国、トランプ氏の「アイアンドーム」ミサイル防衛計画を非難』
発信地:モスクワ/ロシア [ ロシア ロシア・CIS ]
👉https://www.afpbb.com/articles/-/3576808
中国の“実績”と現実
現実を見れば、宇宙を最も軍事的に利用しようとしてきたのは中国ではないでしょうか。
2007年、中国は老朽化した自国の衛星を地上からのミサイルで破壊しました。その結果、数千個ものスペースデブリ(宇宙ゴミ)が発生し、今なお地球周回軌道を漂っています。
これは単なる事故ではなく、宇宙空間での「迎撃実験」、すなわち戦闘実験とみなすことができます。
さらに、中国は他国の衛星に異常接近する機能を持つ衛星(キラー衛星🛰️、Shijianシリーズなど)を次々と軌道に乗せており、まるで「宇宙でのドッグファイト(空中戦)」を試すかのような行動を取っていることが、国際社会でも問題視されています。
アメリカの構想は“盾”であって“矛”ではない
一方で、トランプ大統領が提唱している「ゴールデンドーム(アイアンドーム)」構想は、明確に防衛目的のシステムです。
イスラエルが短距離ロケットから自国民を守るために実装している「アイアンドーム」を参考にし、米国本土をミサイルや極超音速兵器の脅威から守るための迎撃型防衛構想にすぎません。
にもかかわらず、それを「宇宙の軍事化」と非難する中国とロシアの言動には、本質的な欺瞞を感じざるを得ません。
私たちが立ち返るべき“原則”
ここで改めて思い出すべきは、「宇宙空間の平和利用」という国際社会の合意です。
たとえば1967年に発効した「宇宙条約(宇宙空間条約)」では、以下のように定められています:
• 宇宙空間はすべての国の利益のために探査・利用されるべきこと
• 国家による領有は認められず、国際的な空間であること
• 核兵器や大量破壊兵器の配備は禁止
• 月やその他の天体は平和目的のみに利用すること
→ 外務省解説ページ:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-S42-0651.pdf
こうした原則があるからこそ、宇宙は人類の未来を支える“公共財”であり続けられるのです。
結びに
宇宙は、国家の対立や覇権争いの場ではなく、人類全体が共有すべきかけがえのない資源です。
このかけがえのない資源をめぐって、一部の国が軍事的支配を進めようとしている現状を前に、私たちは今こそ、宇宙の平和利用という原点に立ち返り、国際社会が一致団結してその在り方を再確認すべきときだと強く感じます。
宇宙は、未来の世代への責任そのものです。
そしてその責任を果たすことこそ、今を生きる私たちの使命ではないでしょうか。
中山泰秀