佐世保の事件で次々と新事実が発覚しています。

人は「ミステリー状態」「空白」を嫌います。説明つかない現象に出会った時、何らかの理由をつけて自分自身を納得させて空白を埋めようとするメカニズムが働きます。しかし、その空白を埋めるものが真実であるとは限りません。何か空白を埋めてくれそうな情報であれば何でも飛びついてしまう傾向にあり、しばしばそれは誤っているのです。

今回、誰もが理解できない猟奇的な事件が起きました。なぜこのような事件が起きたのかという納得する説明を人々は渇望しました。当初から、家庭環境の問題がその槍玉にあげられました。母親を亡くして間もなく父親が再婚し、邪魔者扱いされて一人暮らしを始め、どんどん心が壊れていったというストーリーが作られていきました。父親が世間体を気にして治療を受けさせなかったという非難さえありました。

ところが、父親は少女を複数の精神科病院に通院させ、しかも一人暮らしをさせたのは主治医の助言によるものであったということが判明しています。報道とは裏腹に、少女からは父親の再婚を喜んでいたという供述があり、新しい母親と一緒に父親のために料理を作っていたという情報もあります。

ここで、当初のストーリーが崩れてきます。少女は専門家である複数の精神科医から治療を受け、父親も新しい母親も主治医やカウンセラーからアドバイスを受けていたのでした。

では、なぜ治療を受けていたのに事件を起こしたのでしょうか?

これこそが解明すべき情報なのです。空白を正しい情報で埋めるためには、どんな治療が行われていたのか(特に薬物療法が施されていた場合にどんな投薬をされていたのか)、どんなカウンセリングが行われていたのか、どんな助言がなされていたのかを解明する必要があるのです。

なぜならば、精神科による誤った治療・指導がしばしば状況を極端に悪化させるからです。治療を受けてから今までなかった殺人衝動が抑えきれなくなり、事件を起こした事例もあります。

もちろん、今の時点で精神科の治療が犯行に至らせたと断言することはできません。しかし、そのような視点がない限り、誰もそこに焦点を当てて事実を解明しようともしないでしょう。警察も検察も少女の代理人も、少女に施されていた精神科治療に注目し、その影響を解明すべきです。