あるショートステイに居たときの話
その老女は100歳を超えていた
タバコが好きで夜7時になると施設の端にあるベランダでタバコを蒸すのが日課だった
月夜のベランダには眼の前が駐車場なのでそこだけ隔離された感じで
おもむろに話は始まった
私はね北方領土で生まれ育ったんだ
ある日役所から米を安く売るからおいでと言われた
あまり食料が満たされたところではないのでみんな買いにいったんだ
その翌日の朝、忘れもしない
港から船が出港してはるか彼方に急いで離れるのをみたんだ
それが地獄の始まりさ
その昼にいきなりロシア兵が襲ってきた
そう、役人は事前に知っていたのになにも知らせないで持っていけない米を売りさばいて逃げたんだよ
あらゆる非道なことをロシア兵はやって見せたさ
でも私達は何も知らせないで逃げた役人に恨みを持ったね
私達は少ない船に慌てて乗って数日がかりで日本に帰ってきた
まだ帰れた人は良かったと言うけどそんなものではなかった
日本にたどり着いた私らを国は全く作物の取れない土地に住まわせたのさ
冬が厳しくてね食料もない、暖を取るものもない
そこで2年もいたらどんどん飢えて死んでいく
このままではみんな死ぬと思った私らはみんなでなけなしの金を集めて3人が東京に行って政府に訴えることにしたのさ
ある程度体力がある3人にさ託したんだよ
やっと東京についたけど役所は相手にもしなかった
このまま帰れないと思って思い切って新聞社に飛び込んだんだよ
すると新聞社が動いてくれてさ
裁判所も動いてやっと国が動いて別の土地をあてがったんだ
でもねあいつらもアコギだよね
みんな別々の土地に住まわせたんだ
わかるかい?集まって騒がれないようにバラバラにしたんだよ
福島の住民がそうだろ?みんなバラバラにされている
あれはさあいつらは私達で学んだんだよ
バラバラにしたら大丈夫って
互いに連絡を取れなくしていくんだ
それがあいつらの作戦なんだよ
やだね・・・・
さあ、部屋に戻ろうか