跨線橋を渡って、次も非電化区間のため乗り込むのはディーゼル車。2両編成だからさっきより人は多いのかなと思ったが、乗った車両には私たちしかいなかった。
「また座り放題だねえ、どこにいく?」
「次は山間部を通るから、どっちでも景色はいいと思うよ!」
「じゃあとりあえずこっちにしよう!」
進行方向左側のボックス席に座る。乗車時間は、行程表によると2時間余り。各駅停車とはいえ、かなりの距離を移動するらしい。県をまたいでの移動だ。終点には、私たちの目的地である温泉街がある。今日はそこでゆったりと温泉に浸かり、最終電車(といっても20時前に出るのだが)で帰宅、という流れだ。
席に座り、荷物を整え、一息つく。いつの間にか、花畑さんはまたブーツを脱いで、素足を床につけないギリギリのところでぶらぶらさせていた。まるでプールサイドで水をパシャパシャしているかのように。きっとそのままの格好でプールを背景に写真を撮っても映えると思う。
「ここから1時間54分だよ~。寝れるねこれは」
そういいながら、足をイスに上げる。そして足の指をくねくね・・・。
「まってまって、花畑さんのお話を聞かない限りはだめだよ!」
「ですよね~。じゃあさっきの続きから。プールの後、あたし、すぐに靴下履くの嫌で、いつもしばらく素足なんだよね」
確かに・・・。1か月くらい前のことを思い出す。私はそんな彼女を・・・。
「うん、確か、そうだったよね・・・」
「チハヤちゃん、そんなあたしのさ、足元ばっかり見てたよね・・・?」
「うっ・・・」
「ね、そうでしょう・・・?」
気づかれていたか・・・。制服を着ているのに足元は素足っていうその姿がとても好きだった。おまけに、学校が終わるころにはクラスの女子、いや男子さえもみな靴下を履いている中、一人だけ素足を貫いていた彼女がとても美しく私の目には映っていた。部活のないときは一緒に帰るのだけれど、一度だけ、花畑さんが素足のままローファーを履いて帰っていた思い出がある・・・。
「は、はい・・・、そうです・・・」
「最初はね、なんか恥ずかしいなって思ってたけど、だんだんそんな気もしなくなって。むしろ聞いてみたくなって・・・」
「私の、ことを?」
「うん。まえにネットで調べてさ、偶然見つけたの。”足フェチ”っていうのがあるって」
「ほ、ほーん・・・」
私もよく調べる、そのワード・・・。ほかに、”裸足”だったり、”素足”だったり。
「そんな時にこの旅行があってさ。あたしふだん、一人の時とか靴を脱ぐ心配がないときも素足でお出かけしてるんだ。ほかの人の前で素足を見せるのはちょっと恥ずかしくって・・・。でもチハヤちゃんの前なら大丈夫かなって思って。だって、ずっと素足で靴を履いてたら、気持ち悪くって!」
「そ、そうなんだ・・・。でも、なんで素足で?」
はじめて花畑さんがブーツを脱いで素足を見せてくれた時から抱いていた疑問。ここで聞かずにいつ聞くんだ。
「んー、そうだねえ、あたし、靴下ってほんと苦手でさ。縛られてる感じが嫌なんだよね。ほんとなら、プールあってもなくても、学校では素足でいたいくらい!」
「でも、そうはしない?」
「さすがにね・・・。高校生なのに朝から素足で過ごすって恥ずかしいというか、引かれちゃうかなって・・・。プールの後とかなら、自然でしょ!」
最後まで素足でいると自然度は減ってる気がするけど・・・。
「なるほどね・・・。でも、花畑さん」
「ん?なあに?」
「我慢するのはよくない、と思う。それに・・・」
「それに??」
「私的に、そうしてもらえると、楽しいというか・・・」
ああ、言っちゃった・・・。こんなこと言って、大丈夫かな・・・?
つづく