ボクは彼女に続いて教室を出た。その後ろから、彼女の友人が追い越していく。理科室は渡り廊下をすぎた、特別教室棟の4階。そこに行くと、2人はゆっくりと、並んで歩いていた。ボクも彼女と親しかったらなあ、と悔しく思う。女子と話したことなんて、久しくないのだけれど。
ほどほどの距離を保ちつつ、彼女たちの後ろについて廊下を歩く。かかとが上がるたびにチラチラと覗く彼女の足の裏。くすんだフローリングの床の上に載ったその白いソックスの足の裏は、やや灰色に汚れて見えた。ボクは心臓のドキドキを抑えながら、彼女たちに続いて、理科室に入った。
今日の授業はなんと場所を移動して、空を見るという。普段は面倒だなと思うけれど、今日は違う。理科室を出て行く彼女のすぐ後ろについて、同じ班のクラスメイトと二言三言話しながら、彼女の足元に視線を向け、体育館棟の屋上へ。
いったん特別教室棟を2階まで下りて、体育館棟へ続く渡り廊下を通る。それから体育館棟の外階段を上っていくと、屋上にあるプールにたどり着く。階段を上るとき、ボクは運よく、彼女の真後ろにつくことができた!やや急な、コンクリートのたたきの外階段。グラウンドから飛んできた砂や石が積もり、外を歩いているも同然の場所。彼女に気づかれないよう、視線をやや上方向に向けると、そこには彼女のソックスの足裏が目前にあった。ステップを踏むごとにばっちりと見える足の裏。つま先部分だけをトントントンと会談に乗せ、軽々と上っていく。そんなソックスの足の裏は、かかと部分はグレーに、つま先部分はやや焦げ茶色に、足の形通りの汚れが浮かび上がっているのだった。まだ地面についたことのないであろう、土踏まずと、彼女の小さな指の周りのみが、もともとのソックスの白さを残している。もうこれだけで十分なほど、彼女のソックスは学校の床の汚れの餌食になっていた。これがまだあと数時間続くのだ。学校が終わるころには、どうなっているのだろう・・・。
そんなことを考えながら上っていくと、屋上のプールに到着。今日は空の観察にはもってこいの晴れ。先生の注意を聞いて、みんな思い思いの場所で、空を見上げている。ちなみに、うれしいことに、上履きは脱がなくていいらしい。ボクはソックスのままでいる彼女を視界にとらえながら、上履きを履いたまま、ブルーのプールサイドに立ち入った。
まだプール開きには早く、掃除もしていないので、プールにたまった水は濁り、あちこちに虫の死骸が浮かんでいる。プールサイドも同様に、埃が所々積もっていた。こんなところをソックスのまま・・・。どれほど汚れていくのだろう。
彼女は友人と共に。空を見上げていた時々足元を見ているのは、床の汚れを踏まないようにだろうか。先生の解説も上の空で、ボクはなるべく彼女のそばで授業を受けていた。上を見ようとしても、どうしても下を向いてしまう。床が熱いのだろうか、彼女は片方の足をもう片方の足の上に載せている。それを交互に繰り返すうち、白いソックスの甲の部分にも、黒っぽい汚れがついていた。
「よし、じゃあ教室に戻って、授業の方に移ろうか」
滞在時間20分ほどで、ボクたちはプールを後にした。下りでは残念ながら足裏は見えなかったが、なるべく近い位置で彼女の後ろを歩き、理科室へ戻った。
つづく