それから数日後の深夜。ボクは再びあのサイトを訪れていた。既にスマホのホーム画面に入れていた、「ミステリー(株)」の、あのフシギなシールのページ。いつなくなるかとヒヤヒヤしていたが、まだなんとか繋がった。購入も可能なようだ。


 あの日直の日から、田畑さんがぐっと近くなったように、ボクには思えていた。上履きは、翌日には持って来てしまったものの、隣の田畑さんが、いつもいままで以上に話しかけてくれるし、内容も、今までは勉強とか、学校のこととかだったけど、ボク自身のことや、田畑さんのことなども話題に上るようになった。また、移動教室の先でも、席は自由なのにボクの隣に座ることが多くなった。

 そして一番、ボクが驚いていることは、だ。ボクのスマホの、アドレス帳。その"た"の欄に唯一ある人物。田畑さん。そう。ボクと田畑さんは、メールアドレスを交換したのである。

 

 ある日の放課後のことだった。ボクは帰宅部なので、授業を終えるとすぐに家に帰るのだが、その日は隣に座っていた田畑さんが、声をかけてくれた。

「鈴木くん、ちょっといい?」

「え?うん。なあに?」

「あのさ、わたし、鈴木くんのアドレス、まだ知らないんだ。・・・だから、交換、しよ?」

う、うおおおおお!ま、まさか、こんな時がくるなんて。田畑さんの方から、アドレス交換を!ボクはしどろもどろになりながら、も肯定の意を示し、震える指でなんとかスマホを操作して、田畑さんとアドレスを交換した。ボクのスマホに、田畑さんの名前が、入った。ボクのアドレスを受け取った田畑さんは、嬉しそうで、幸せそうな微笑みで、ありがとう、と言ってくれた。ボクは彼女が立ち去ってもなお、頭がぽわんとして、スマホ片手に、その場に立ちすくんでいた。

 そんな夢のような日が続くと同時に、田畑さんが何かに悩んでいるように見えるときもあった。ボクとの会話の途中で何かを言いかけてはぐらかすことが、日を追うごとに多くなった。

 

 やがて1週間。新たな月曜日がやってくる。ボクはもう一度、そんな田畑さんに靴下生活をやって欲しいと思うようになっていた。他の女子ではない。田畑さんにだ。あのカンペキな田畑さんのことだから、きっと自分で忘れて来ることなどあり得ないだろう。だから、ボクが自分で作り出さなければ、その機会は来ない。

ボクは再びそのサイトを見て驚いた。出血大サービスをやっていたのである。今まで一つ1000円(税抜き)だったのが、今ならいくつ買っても、ひとつ500円(税抜き)になっている!それも、2回目からの購入者に限られる。

 ・・・買おう。買っちゃおう。せっかくこの前収入もあったし、4枚くらい・・・。ボクは早速、購入画面に進んだ。



 シールはお金を払った4日後に届いた。いつもの封筒に、確かに4枚のシール。さて、どうしようか・・・。

ボクはひとつ、わくわくするようなことを思いついた。・・・4枚のシール。ボクはそのひとつを手にとった。

その翌日。ボクはあるあり得ないような願いを書き込んだシールを、ポッケに忍ばせて家を出た。驚くことに、その日、ボクは田畑さんと図書館で勉強会をする約束をとりつけていたのである。




つづく