驚いた。そこにはとてもかわいい女の子が一人、マリナの横に立っていた。当時の僕と、歳はあまり違わない。けれど顔立ちは整っており、雑誌のトップモデル言っても過言ではないくらいの容姿。スタイルも良く、ごく一般的な小学生女子の服装を見事に着こなし、まるで同じ小学生とは思えないくらいだった。僕はしばしぽかんとして、彼女のことを見つめてしまった。彼女が大人になったら、一体どんな美人さんになるんだろう。是非現代に戻ったら会ってみたい。でも、彼女は一体何者なのだろう。こんなに真っ暗でひんやりと涼しい静かなところで、なにをしているんだろう。マリナやコハルによると、どうやらここが、とっておきの場所のようだった。
「ユキおねえさん、この人だよ。私たちに話しかけてくれたおにいさん」
ユキおねえさんと呼ばれた彼女は、頷いて微かに微笑むと、僕には笑顔を向けて、言った。
「初めまして。美波柚木と申します。本日は彼女たちが突然お呼びだていたしまして、申し訳ございません」
まるで大人のような話し方。僕でもこんなにしゃべれない。
「あ、い、いえいえ。全然平気ですから」
つられて僕もペコペコと頭を下げる。と、彼女の足元に気がつく。膝したの丈のスカートから覗く細い足そしてその足を包むクリーム色のフリル付きソックス。そして、上履きは、なし・・・。
「は、恥ずかしいので、そんなに見つめないでください・・・。私、夏は上履きを履かない主義なんです」
僕は再びぽかんとして彼女を見た。彼女の容姿と、上履きを履いていないということとのギャップが激しい。激し過ぎて、僕の頭はパンクしそうである。
「え、ど、どうしてですか・・・?」
「き、気持ち、いいから・・・?」
顔を真っ赤にして答えるユキさん。足元のソックスの指がもじもじとうごめく。
「ねえねえおねえさん、おにいさんに、あれ、見せてあげてもいい?」
「・・・え?ええ、ぜひ、見ていただきたいわ。えーっと・・・お名前は?」
僕はさっきと同じ名前を伝える。本音を言うと、本名を伝えたかったけれど・・・。ユキさんは僕が発した名前を繰り返して、頭に入れたようだった。それから僕の顔を見て、にっこりと微笑んだ。
つづく