それから1週間。心配だった友達もできて、勉強にも、学校にも、慣れてきた。でもあたしの足元には、相変わらず上履きが存在していた。先生も、クラスメイトも、誰もこのことを指摘してはこないのだけれど、みんながハダシのなかで一人だけ上履きに靴下というのは、だんだんとその方が恥ずかしくなってくるのだった。実際あたしは、体育館で体育をする時、上履きを脱いで、靴下でやっていた。上履きを履いていると危険だということもあったし、ちょっとでもみんなと同じになりたかった。
 けれど一日中ハダシになる覚悟は、まだできていない。教室や理科室での授業は、今だに靴箱から取り出した上履きを履いている。
5月になった。まだまだ朝は肌寒い。けれどみんなはハダシ。学校で見る子見る子、みんなハダシ。そして一人上履きを履いたあたしとすれ違うとき、みんなは不思議な視線を向けてくる。どうして、この子はハダシなんだろう・・・?
 お父さんにも相談した。居心地の悪さ。だったらハダシになっちゃえばいいじゃないかと、お父さんは笑っていった。それができたら、こんなに悩んでないよ。あたしはそんなお父さんのふくらんだお腹にパンチして、自分の部屋に戻った。
 
 その日は金曜日だった。あたしは2週間に一度、上履きを洗うために家に持って帰ってきていた。いまそれは机の横に、上履き入れに入ったまま置かれている。洗うのは、明日にしようと思っていた。あたしが持っている上履きは、この上履きの他にあともう3足ある。でもその2足は、もう小さくて入らない。あたしは上履き入れを手にとった。そこから真っ白な上履きを取り出す。ハダシ教育の賜物で、校内はあたしが前いた学校よりも格段に綺麗だった。2週間履いた上履きも、ほとんど汚れていない。こんなに綺麗なら、ハダシで歩いてもそう抵抗はないのではなかろうか・・・。

 そして土曜日が過ぎ、日曜日の夕方。あたしは自分の部屋で宿題をしながら考えこんでいた。明日持っていく上履きは、すでにランドセルの横に置かれている。小さい頃からこうしているおかげで、上履き忘れは一度もない。
 あたしは思っていた。これを持っていかなかったら、あたしは自動的に、靴下かハダシで過ごさなくては、ならなくなる・・・。上履きさえ、なかったら・・・。
宿題を終え、明日の準備を完璧にした後、あたしは再び考えた。この上履きさえ、なかったら・・・。そして、ランドセルの横の上履き入れを、上履きもろとも、ベッドの奥に突っ込んだ。そしてそのまま、あたしはベッドに飛び乗り、布団を頭からかぶった。あたしは明日、上履きを持っていかないんだ。そして明日、あたしは、一日中、ハダシですごすんだ。そうしたら、もうあたしはみんなと一緒。もう居心地の悪さなんて感じない。あたしは本当に、みんなと友達になれるんだ。だから、明日は、そう。上履きなんて、持っていかないんだ。寝よう。忘れよう。上履きなんて、もう、いらない・・・。
 あたしは強く、強く、何度も頭のなかでそう考えながら、深い眠りに落ちていった・・・。

つづく