「やばー、今日一日裸足だあ。」
すると彼女は、なんでもないふうに履いていた革靴を脱いで自分の靴箱に入れると、肌色がかかとや足先から透けている黒タイツのみで、床に立った。
「冷たー!大島くん、早くいこっ。」
「あ、うん。」
僕はすっかりその姿に見とれていたが、なんとか平静を保ちつつ自分の上履きに履き替え、タイツ姿の彼女に続いて校内に立ち入った。やった、あの上履きを忘れた高木さんの真後ろにいる。それも、一緒にいる。階段を登る時、嫌でも彼女の足裏が見えた。小さくて、肌色の透けた足裏。教室のある階に近づくにつれ、次第に白っぽくなっていった。間近でこんなの見たのは初めてだった。意外にも。
廊下を歩くと、ダンダンと、高木さんの足音は響いている。衣擦れの音も聞こえる。真横で、彼女と話しながら教室に入ると、僕はそのまま自分の席に着いた。彼女と離れるのが、ちょっと惜しい。でも、以前のこの日、彼女は一体どこに行っていたのだろう。
すると、高木さんがちょっと急いだ様子で教室から出て行った。僕もそれとなく後をついて廊下に出ると、彼女はちょうどトイレの前に立っていた。上履きを履いていないのを躊躇したのか、トイレの前で立ち止まる彼女。そして辺りをキョロキョロと伺う。僕はそれとなくその後ろを通り過ぎ、手洗い場へ行くと、鏡を見るふりをする。すると高木さんは、決断したのか、顔を上げてタイツに包まれた足をトイレに入れた。そしてそのまま、トイレの中へ。高木さんが、上履きなしでトイレに入った瞬間だった。あの日彼女は1人で、誰にも見られることなくトイレに入っていたのだろう。よかった。一緒に教室まで来れて。途中で離れることなどなくて。僕は高木さんの姿が見えなくなると、教室へと戻った。満足感に浸っていた。
すると彼女は、なんでもないふうに履いていた革靴を脱いで自分の靴箱に入れると、肌色がかかとや足先から透けている黒タイツのみで、床に立った。
「冷たー!大島くん、早くいこっ。」
「あ、うん。」
僕はすっかりその姿に見とれていたが、なんとか平静を保ちつつ自分の上履きに履き替え、タイツ姿の彼女に続いて校内に立ち入った。やった、あの上履きを忘れた高木さんの真後ろにいる。それも、一緒にいる。階段を登る時、嫌でも彼女の足裏が見えた。小さくて、肌色の透けた足裏。教室のある階に近づくにつれ、次第に白っぽくなっていった。間近でこんなの見たのは初めてだった。意外にも。
廊下を歩くと、ダンダンと、高木さんの足音は響いている。衣擦れの音も聞こえる。真横で、彼女と話しながら教室に入ると、僕はそのまま自分の席に着いた。彼女と離れるのが、ちょっと惜しい。でも、以前のこの日、彼女は一体どこに行っていたのだろう。
すると、高木さんがちょっと急いだ様子で教室から出て行った。僕もそれとなく後をついて廊下に出ると、彼女はちょうどトイレの前に立っていた。上履きを履いていないのを躊躇したのか、トイレの前で立ち止まる彼女。そして辺りをキョロキョロと伺う。僕はそれとなくその後ろを通り過ぎ、手洗い場へ行くと、鏡を見るふりをする。すると高木さんは、決断したのか、顔を上げてタイツに包まれた足をトイレに入れた。そしてそのまま、トイレの中へ。高木さんが、上履きなしでトイレに入った瞬間だった。あの日彼女は1人で、誰にも見られることなくトイレに入っていたのだろう。よかった。一緒に教室まで来れて。途中で離れることなどなくて。僕は高木さんの姿が見えなくなると、教室へと戻った。満足感に浸っていた。
この日は移動教室が多かった。だから忙しく感じていたのだろう。僕は逐一高木さんの様子をそれとなく観察していた。
それにしても、今はどこに行ったのかわからない人もいっぱいいる。当時より、僕はおしゃべりになっていたのか、いつもより話すな、と言われてしまった。
いつの間にか、外は曇り空になり、寒々しい空気が校舎内を覆う。上履きを履いていない高木さんは、移動教室でも寒そうに校舎内を歩いていた。それでも笑顔を絶やさない彼女をすごいと思った。
化学の授業は席が自由である。これはチャンスだと思い、うまく友人を誘導して、先に席についていた高木さんの斜め後ろの席を僕は陣取った。うまい具合に、彼女のタイツの足の裏が見えている。椅子で幾分か暗くなっているが、白っぽくなっているのがわかる。きっと素足も汚れているのだろう。僕はドキドキしていた。
つづく