上履き、いるんでした・・・。すっかり、忘れていました。
「上履き、持ってこなかったんだ。忘れてた!」
「うん、いらないよなあって、思って。荷物になるし。」
「でも、新しいから、いいよね?」
「ちょっと冷たいけど。」
「確かに。」
ユメちゃんも私と同じく、上履きを持ってきていませんでした。白ソックスと黒いタイツだけで私たちは階段を登ります。周りには上履きやスリッパを履いた人がいっぱい。裸足なのは私たちだけ・・・?
「やば、みんな靴履いてるよ・・・。」
「持ってきたら良かったかな?」
「うん・・・。」
だんだん裸足であることに恥ずかしさを感じつつも、冷たい廊下をそのまま歩き、教室につきました。暖房が効いていて、暖かかったです。すでに塾の同じクラスの人が座っていました。私たちは座席を見つけると、前後に並んで座りました。窓際で、右隣は塾の田中ヒロキ君。一番頭のいい人です。まさかとなりになるなんて・・・。数学の参考書を読んでいます。黒縁メガネが決まってます。まだしゃべったことはなかったのですが、私は思い切って、話しかけてみることにしました。
「おはよう、田中君。」
急に声をかけられた田中君は、ピクッとして顔をあげ、私の方を見ました。そしてニコッと微笑んで、
「おはよう。」
と言いました。冷たい感じがしていましたが、なんだか明るい感じの雰囲気。私は微笑むと、ユメちゃんとの会話を始めました。椅子のしたで組まれた靴下だけの足元は、部屋の暖かさのおかげで寒さを感じなくなっていました。
「ねえ、ちょっと、トイレ行かない?」
最初の教科、英語の試験が始まる前、ユメちゃんが言いました。
「いいよ、行こっ」
私たちは席を立つと、寒い寒い廊下に出ました。身震いするほどです。足裏は氷の上を歩いているよう。私の靴下は冬仕様の幾分か分厚いものですが、うっすらとタイツから素足の指の透けてるユメちゃんは冷たそうです。靴下をタイツの下に履いてたら、ちょっとはましだったかな。ユメちゃんは言います。私的には、何も履かなくて、素足の透けてる方が可愛くっていいと思うのですけど・・・。寒いですものね。
つづく