授業が始まってしばらくすると、さすがに足がしびれてきた。冷たいのを覚悟して、そろそろと足を床につける。ジーンとする。今更ながら、上履きが恋しく思う。
外に出たくないと思っていても、なかなかそうはいかない。昼食を終えると、私は部活の顧問の先生に呼ばれて、体育の先生の部屋へと行くことになってしまった。校舎を1階までおりて、渡り廊下を通った先の、体育館にあるその部屋。もちろん、行きたくない。でも、いかないきゃいけない。私は意を決して、足にぎゅっと力をこめ、冷たい廊下へと足を踏み出した。
昼になって、気温は今朝ほど低くなかったが、床は変わらず氷のよう。つま先立ちにも疲れ、足の裏全体をつけて歩く。汚れるし、冷たいし、滑るし。なんで忘れちゃったんだろう。自分が憎らしい。階段を1階まで降りると、その先に売店がある。自動販売機を覗いてみると、ホット飲料がいっぱい。帰りに買っていこうかな、と思いながら、渡り廊下へと向かう。
そこは、外だ。売店の先のドアを開けると、冷たい風がヒューっと吹いてきた。私は思わず身震いした。寒い。
私はコンクリート床の渡り廊下を一気に走り抜けると、体育館の中へと飛び込んだ。なんとか、辿りついた。
再び階段を上がる。ツルツルする。タイツのせいだろうか。その先に、目指してきた部屋がある。
失礼します。そして要件を言うと、顧問の先生が顔を書類の山からだした。
「おう、藤野、来たか。入れ、入れ。寒かったろう。」
「失礼します。」
先生はストーブの前でホットココアを飲んでいた。私が物欲しそうな顔だったせいか、私にも一杯、くれた。温かかった。あのホットドリンク、買う必要がなくなった。
「急に呼び出してすまないが、どうしても伝えたくて。」
先生はいつもより真剣な目で私を見た。
「はい・・・。」
私は身構えた。なんだろう。お説教か、何かあったか?
つづく