それから1時間。私はすっかり暗くなった学校の玄関前のベンチに腰を下ろしていました。足は寒くないようにスカートの中に隠しています。それでも、まだ寒いです。時間も遅くなり、私は無慈悲にも校舎内から追い出されてしまいました。今学校内は無人で、しっかりと玄関には鍵がかかっています。ユメちゃんたちは帰ってきません。私は一人、おいてけぼりをされてしまったのです。それを思うと、泣けてきます。けれどそうメソメソしてはいられません。どうやって帰ればいいのでしょう。もうこの近くに、私を助けてくれるような人はいません。ユメちゃんたちも帰ってくる気配はありません。私には履物がなにもありません。いま足に身につけているのは、1日学校内を歩き回って、学校中の埃を吸い付け、真っ黒になった薄い白ソックスのみです。これだけで電車などに乗って帰らなければなりません。

そうするしか手段がないことはわかっていました。けれど、そうする勇気が、私にはありませんでした。ソックスだけで、人の行き交う街中をたったひとりで歩き、大勢の人と一緒に、電車にまで乗らなければなりません。朝のあの光景が脳裏に浮かび上がります。たくさんの人の視線が私に集まることが容易に想像できます。

私は自分の足をさすりました。また一段と寒さが増してきたように感じます。首に巻いたマフラーだけが頼りです。こうしていても、状況はなにも変わりません。とりあえず、行けるところまで行こうと、私は決心しました。幸い、学校の周りには人気はありません。私はそろりと白ソックスを履いた足を、地面に下ろしました。石のタイルのひんやりとした硬さが足の裏に伝わります。校庭の砂が堆積しているのか、ザラザラとした感触もあります。私はなるべく人目につかないよう小さくなって、すり足で校門へと進みます。

つづく