「実は・・・。お前に、キャプテンをやってもらいたい。」
先生はいったん間をおいて、そういった。私に、部活の、キャプテン?
「え?でも・・・。」
キャプテンは3年生が引退した夏に決まっていたはず・・・。同じ2年の女の子・・・。
「いや、そいつがな、急にキャプテンは無理だと、俺に相談してきたんだ。自分には、向いてないんだと。9月からやってきて、限界を感じたんだと。」
「そう、だったんですか・・・。何も、わからなかった。」
「ああ・・・。この前涙ながらに訴えてきたよ。ずっとふさぎこんでいたんだな。で、どうだ?やってくれるか?」
急な話だった。いま、決めるなんて・・・。あの子にも大変だったキャプテン。私にできるのだろうか?ドジなのに。腕はそれほどでもないのに。
「俺が、お前がいいと思ったんだ。他のやつには、頼めない。お前しか、いないんだ。な?頼む!」
先生が頭を下げた。私は、決めた。
「わかりました。やってみます。」
「そうか?ありがとう!よかった。お前が引き受けてくれて。どうしようかとm、悩んでたんだ。」
「で、あの子、部活は・・・?」
「続けるぞ。面倒見てやってくれ。」
「そうですか、よかったあ。」
「よし、じゃあ、これからのクイズ王部、しっかり頼むぞ、新キャプテン!」
「はい!」
私は何か大きなものを得た気分でココアのお礼を言って先生の部屋をあとにした。体育館では男子たちがバスケットボールに興じている。外を見ると、今朝のくもり空が一転、金メダルのような丸くて輝く太陽が、こちらを向いていた。
「これからも、頑張る。」
私はいつの間にか、上履きを履いていないことなんてどうでもよくなっていた。タイツのままで廊下を滑っていた。寒さも吹き飛ばすほど、心が温かくなっていた。
終わり