「あ、ごめんなさい、おどかしちゃって・・・。」
その女子は申し訳なさそうに俺の方を見つめていた。
「げほ、ごほ、んん、あ、ごほ、いや、ごほ、こっちこそごめん・・・。そ、そうですね。ひどい雨っすね。」
「私なんか、びしょ濡れですよ。全身。」
そういって、自らの体を俺に向ける。ショートな髪から、セーラー服、スカート、白ソックスに靴まで、文字通り全身ずぶ濡れ。そりゃ傘差してねえんだから、そうなるわ。あほか?こいつ。
「いや、あのですね、傘は持ってたんですよ。いまも持ってるんですよ?ほら。」
ピンクの傘。女らしい。
「でも、ですね、まったくこの雨に歯が立たなくて・・・。あきらめました。だって、前も後ろも、雨が吹き込んでくるんですもの。」
話しながらする困り顔。かわいい・・・。て、また俺は!コノヤロ。
「ちょっと、脱がせてもらいますね。」
ん?ちょ、ちょっと待て!
「あ、あの。ちょ・・・。」
俺の言葉は彼女に届かず、彼女はまず靴から脱ぎだした。傾けると、出るは出るは、水がさーっと。それから靴下。脱いで絞ると、お風呂のタオルのように、水がしたたり落ちる。そこまでか、と俺が半分安心、半分落胆した時、俺は目を見張った。彼女はなんと、セーラー服まで脱ぎだした!おいおい・・・。
「あ、ごめんなさい、すぐ終わりますから。」
「あ、じゃ、俺、向こうむいとくわ・・・。」
背中越しに、雨音に交じって聞こえる、彼女の着替える音。心臓がバクバクいっている。
「終わりました。どうぞ。」
恐る恐る振り向く。俺、こんな性格じゃねえのに・・・。
彼女はジャージに着替えていた。いわゆる学校の、体操服だ。上は長袖、下は半ズボン。もともと準備していたのだろう。首にタオルをかけ、足元は裸足のまま。靴下も靴も履かないまま、彼女はベンチに腰掛けた。
「はあー・・・、靴下忘れちった。靴も乾かないだろうなあ・・・。」
俺、何か言うべきか・・・?
「あ、そういえば、お名前、なんていうんですか?ここら辺の人ですよね。」
えらい人なっつこいけど、俺に気があるのか・・・?むほ。
「あ、俺?福島龍二。高2。」
「そうなんですか。じゃあ、同い年だ。それに、私、福嶋のの。苗字も一緒だね。」
うそだろ。いとこかなんかか?
「そ、そうなんだ。偶然、だね。」
「うん、すっごい偶然!」
タメと分かってから、彼女はもっとフレンドリーになってきた。距離も、近い。ちょ、勘弁してくれ・・・。でもこんな子、どのクラスにいたかなあ。男には顔は広いんだが。女の子にはオクテなんだよ。
つづく