「これこれ!良かったあ、まだ残ってた。」
ラナがある一つの台の前で立ち止まった。最新式のUFOキャッチャー。だが仕組みは変わらない。2本のアームでうまく景品を動かし、下に落とす。最近はその工夫の仕方が込み入って、非常に景品獲得が難しい。プレイヤーの腕が上がってきたから、というのもあるかもしれないが、僕はまだまだ素人だ。今まで大きな景品を獲ったのは、数回しかない。だから、これも獲れるか、自信が全くない。
「これは・・・。」
「ね?欲しいでしょ?いいよねえ、欲しいなあ。これ。」
「難しいね。前にもやったの?」
「うん、キョンが10回くらいしたけど、全然ダメだった。私がそのあと、5回したんだけど、やっぱりダメ。」
「これ、そんな難しい?」
「うん・・・。ねえ、だからやってみてよ。シュン、好きなんでしょ?」
いつ言っただろうか、そんなこと。
「じゃあ、試しに一回。」

 100円玉を2枚いれ、いざ、これに挑戦する。大きな効果音に耳を傾けながらボタンを押し、アームを右にずらす。ちなみに景品は箱物で、滑り止めのついた棒の上に乗っている。滑り止め。どう影響するか。とにかく僕は景品の真ん中にアームを持って行き、やや前方にアームを下ろした。
「どうなの?」
ラナが目を輝かせながらガラスの向こうの景品を見つめている。アームは僕の目安通りの位置に下りた。腕が閉まる。そして、アームが上がる。
「えーーー。」
だが残念なことに、アームは箱を微妙にずらしただけで、仕事を終えた。残念そうな音楽が僕を慰める。
「全然動かないね・・・。」
「ショウダメダメじゃーん。私も一回やってみる。」
 

 今度はラナが100円玉を2枚、投入する。ボタンが点滅し、プレイスタート。
「よし、やるぞ。」
するとラナはおもむろに足をモゾモゾさせたかと思うと、履いていた革靴を脱ぎ、横にほっぽってしまった。そして白いハイソックスだけになった足元をぺたりと床につけ、体をくねくねさせながら、アームを操作する。足の指も、くねくね動く。僕の目は釘付けになった。

つづく