「どうしたの、これ・・・。」
「ああ、起きちゃったか。悪いな、やっぱりこれじゃあ無理だった。オーバーヒートしちゃってね。今確認してたんだけど、僕の力じゃ直せそうにない。」
「ちょっと、どういうこと?じゃあ私たち、どうすればいいの?」
「大丈夫、JAF呼べば、すぐに来る・・・、あれ?携帯どこやったかな?」
「ないの?」
「確かポケットに・・・あれえ?」
私は次第に冷や汗をかいて行くのを感じていた。
「ちょっと中を見てみる。」
車の中を探していた彼は、数分後、肩を落として出てきた。
「ごめん、携帯、どこかに忘れてきたみたいだ・・・。」
「ウソでしょ・・・。」
「君のは・・・?」
「さっき電源きれたのよ。もううんともすんともいいません。」
「そんな・・・。」
「ねえ、近くに家とかないの?」
「道が舗装すらされてないんだぜ?あるわけがない。こんな深い山の中に。」
「どうすんのよ・・・。ねえ?」
「・・・おりよう、まだそれほど登ってないはずだ。せいぜい30分くらいしか走ってないし。歩いて1時間もすれば、ふもとに着くよ。」
「そうするしかないのかもね。」
「幸い、日が暮れるまでもうしばらくあるし、大丈夫だろう。」
「先生には?何時につくって言ってあるの?」
「今日中にって。間に合うよ。」
「じゃあ、そうしましょ。ここにいたって、車が通るはずもないし。」
「ああ。君も来るかい?」
「当たり前でしょ?こんなとこいたら熊かなんかに食われるわ。」
「そうだね。じゃ、行こう。必要な荷物だけ持って。」
「わかった。」
こうして2人の大学生は、未舗装の、土がむき出しになったままの山道を、延々と歩くはめになったのであった。

つづく