翌日、いつもより30分早く登校した彼は、誰もいない教室でマントを羽織り、姿を隠して目当ての異性が来るのを待っていた。彼女はいつも一番乗りに来て、机に座って何をするでもなくただぼーっとしている。ある日偶然早く登校した彼は、一人で机についている彼女の足元に釘付けになっていた。季節は真夏、教室は朝から蒸していて、彼女は上履きを完全に脱いで床に並べてあり、靴下だけの足は机の前方に取り付けられている棒に置いている。冷たくてその方が気持ちいいのだろうが、彼にとっては宇宙人に出会ったような衝撃を受ける出来事となった。
 

 その日も、彼女は一番にやって来た。もちろん彼に気づくはずもなく、彼女は自分の椅子に座った。ランドセルから今日の授業の道具を取りだし机の引き出しにしまうと、早速ぼーっとし始めた。彼はただ成り行きを見守る。上履きを脱ぐという確信もなく、脱がない可能性の方が高い。あまり期待をせずに黙って彼女を見ていると、嬉しいことに足をもぞもぞさせ始めた。今日は気温はそれほど高くはないが、湿度が高い。午後は雨の予報が出ている。いずれもブランドものの半袖のTシャツに7分袖シャツ、ミニスカート、白いニーハイソックスというかなり大人っぽいファッション。男子からの人気は高く、彼は一度も話したことがなかった。

 足をもぞもぞさせていた彼女だったが、それから10秒後、一気に足から上履きを離し、露になった白いニーハイソックスに包まれた足を、机の棒に置いた。そしてそのまま机に伏せてしまった。眠ったのだろうか、どちらにしろ、今がチャンスだ。彼は素早く彼女の椅子のしたに潜り込むと、脱がれて丁寧に床に置かれた上履きを手に持ち、マントのなかにしまった。前を向くと、その目の前に彼女の足があった。恐る恐る顔を近づける。彼女は全く気づいていない。足と顔の距離が10センチに達した時、突然彼女が足を動かした。棒の上で足を滑らせ、つま先が床についた。彼の顔と彼女の足との距離は再び開き、彼はここであきらめた。早く上履きを彼女の足から離して、自分は姿を見せないと。人が増えたらできにくくなる。

 すぐさま彼は教室を出ると、上履きを秘密の場所に持っていき、それからトイレに駆け込みその中の個室に入って鍵を閉めた。そこには彼のランドセルが置かれていた。彼はマントを脱ぐと、大きく呼吸した。成功だ。僕はやった。彼は大いなる達成感に包まれた。

つづく