私のクラスの子達も、足元はみんな裸足だった。朝、サンダルを素足で履いてきて、靴箱にそれを入れてからは、グラウンドでも裸足だ。校内はどこでも裸足で行動をする。この運動を5年ほど前からやっているらしい。この学校に行くことが決まって、真っ先に言われたのが、これだった。私の中ではとくになにも感じない。これが私の学校だ。頑張ろう。

 自分の自己紹介が終わると、次はこども達に一人一人自己紹介をしてもらった。私の手元にある、自作の生徒ノートを見ながら、それを聞く。みんな私の目を真っ直ぐに見てくれる。なんだかうれしい。学校には私服での登校だが、どの子も個性的な服装だ。女の子の中にはばっちりおしゃれをして、裸足なのも自然な感じにしている子もいるし、ラフな格好をしている子もいる。男の子の中には、ブレザー(!)を着ている子もいるし、ジャージの子もいる。実に面白い。ちなみに私は、黒いスーツにネクタイ、ベージュのストッキングに校内履き。化粧も控えめで、スカート丈もほどほどにしている。かみはやや茶色に染め、ショートカットにしている。前髪をピンで留めておく。
 生徒の自己紹介が終わると、"学級活動"。通信簿を集めたり、プリントを配ったり。着々と進めていく。生徒と話すこともできた。気軽に話しかけてくれたかんじがした。まだまだこれからだ。クラスのみんなと友達になりたい。一担任として。

 始業式から1ヵ月、私はある疑問に悩まされていた。裸足教育ということで、学校の生徒はほぼ全員が裸足、私のクラスの子達もみんな裸足だった。毎日元気で裸足で登校してくる様を見ると、気分は晴れやかになる。しかし、先生である私だけ、靴を履いてていいのだろうか。昼休みなどは、仕事が空いたとき、女の子と一緒に遊ぶことがある。そんなときも、一人靴を履いているのが、最近おかしく感じるようになってきた。4月はそんなことなかったのだが…。
 教師について、裸足で過ごさないといけないとか、裸足はいけないとか、そういう決まりはない。だから私が裸足になろうが自由である。けれど、職員室で裸足の先生はほとんどいない。体育の先生など、一部の男の先生だけだ。そのなかで一人私が裸足になるのは少し恥ずかしい気もする。それに生徒たちはなんとも思っていないようだ。どうしようか、私は数日間考えた。校内を裸足で歩いたことなど、一度もない。私が学生のころ、裸足になったのは運動会だけだ。
 それに、悪い気もするが、床が汚いのである。こども達のかわいい小さな足の裏は、毎日真っ黒に汚れてしまう。男の子も女の子も。校舎が古く、それも仕方ないように思われる。

 そんなことを考えていたが、ゴールデンウィークに決心した。連休最終日、ふとん野中で考えた。よし、明日からみんなと一緒にしよう。私も、裸足運動しよう。


つづく