「ほら、そこ!もっと強く!そこは弱く!トランペット!そこちが~う!」
顧問で指揮者の北口先生が吠える。ここは私の通う中学校の音楽室。旧校舎と新校舎の2棟ある校舎のうち、新校舎の最上階、4階にそれはある。
今は夏休みのだららんとした気持ちもだんだん締まってきた9月末。まだ夏休みの宿題と提出してない人もいるみたいで、先生からは怒られっぱなし・・・。
私は、そう、吹奏楽部に入っている。今年中学2年生の、ジュリア。こうやってカタカナにすると、外国人みたい。でもれっきとした日本人。両親もそう。今日は日曜日。学校はもちろん休みだが、吹奏楽部はもう間もなくコンクールがある。その練習に、みんな熱が入っている。
9月末といえど、まだまだ気温は高い。夏日の続く中、窓は全開で、からりと晴れ渡った空のもと、グラウンドからは運動部の練習する声が聞こえる。時々ホイッスルの音。これが一度雨が降ると、窓を閉ざし、湿気のこもったサウナ状態の部屋での練習となる。楽器を濡らしてはいけない。吹奏楽部のメンバーは、全員で35人。厳しい音楽教師、北口先生の元、毎日練習だ。私のパートは、さっき注意されたトランペット。隣の後輩、ルリがちょっと間違った。ちょっとのミスでも命とり。北口先生はいつも言う。練習でも、真面目にやれ、本番と思え、と。
今練習中なのは、課題曲の、ホルスト作曲、組曲第1番を編曲したもの、自由曲はジブリ映画の主題歌、オーケストラヴァージョン。時間制約もあって、15分以内に収める必要がある。今の状況では、悠に超えてしまう。スピード感が勝負だ。
そんな練習をしている私たちの足元は、男子も女子もみな真っ白なソックス。くるぶしソックスは禁止。北口先生の決め事。また、音楽室内は土足禁止だから、上履きは履いてない。けれど床はフローリングなので埃もたまる。土足禁止でも、みんなの白い靴下は、いつもうっすらと黒く汚れてる。今の時期は靴下も汗で湿って、汚れをどんどん吸い取る。洗うの、大変なんだよね。
つづく