おはようございます!
 女子高生の元気な、甲高い声が、放課後の体育館に響く。
 これはチアリーダー部の練習。つい先日地区大会の試合を終え、文句なしの優勝を飾り、全国大会への切符を手にしたばかりである。全国大会は2ヵ月後。今日は一応部活と言う名目だが、コーチも今日明日くらいは羽根を伸ばすよう言ってくれた。でも体育館には来いと。部活着は、赤を基調とした、校名、校章入りの長袖Tシャツに赤いミニスカート、レギンスに白いルーズソックス、スニーカー。9月中旬というこの頃は暑さも和らぎ始めるが、まだまだ暑かった。特に体育館の中は蒸す。少し準備体操をしただけで汗びっしょり。様子を見守るコーチの額にも、汗が垂れる。ルーズソックスを履いた足が不快だ。蒸れ蒸れだった。
 今年、全国大会を終えた時点で、3年は引退する。今日はのんびりな感じだが、やはり誰もが緊張はしていた。
 

 まだ1年で、チア歴半年のマリコも、試合には出ないものの、その空気を感じ取っていた。
よし、じゃあいっちょやってみるか。大会でした演技。いけるか?
もちろん、ねえ、みんな!
はい!
先生の提案で、地区大会で見せた演技をもう一度することになった。マリコは舞台袖で雑用をしていて、見られなかった。絶好の機会だった。同じ1年の子と、体育館ステージに座り、体育館中央で行われる演技を見る。どきどき。
音楽がかかる。ハキハキとした先輩たちの声が体育館に響き渡る。見ると、入り口に生徒たちが集まってみていた。チアリーダー部はこの学校の看板部の一つなのだ。
演技は続く。

静寂。沸き起こる拍手。なんと体育館の前には人だかりができて、中にもたくさんの人がいた。みんな幸せそうだった。こんなに人を楽しませられる部に、私は入っているんだ。誇りに思って、今後も精進しよう。私が2、3年になったときも、全国大会に出場しよう。しや、しないといけない。必ず。マリコは強く心に決めた。
演技を終えた先輩たちが観客にお辞儀している。数分の後には、みんな帰っていった。
いやあ、よかったよ。相変わらず、完璧だ。文句なし!
コーチは時に厳しく、時に優しい。嫌になることもあるけど、誉めてくれるときの笑顔が、とてもすてきである。ちなみに今年で50歳、この学校で英語を教えている。全く英語を使わないのだが。
先輩たちは相当つかれているようで、マリコたちが飲み物を配って回る。すると、2年の先輩のひとりがスニーカーを脱いだ。
つづく