「せんせえ、おはようございます!!」
「おはよう、みんな。体調は、大丈夫ですか?うん、みんな元気そう。じゃあ、出席とるわね。」
名前を呼び上げていく。誰もが晴れ晴れとした表情。不安の色はない。
「先生、足、大丈夫ですか?」
傷が直るには、1週間は掛かるそうで、それまで包帯は巻くよう言われていた。今も右足のかかとは白い包帯で包まれている。すでに痛みは消えていた。
「ええ、大丈夫。」
「よかったあ。治ったら、また遊ぼうね。」
「ええ、もちろん。」
「じゃあ、授業始めましょうか。教科書出して…。」

いつものように、楽しい授業が始まった。黒板を背に、皆を見る。熱い視線が私に注がれる。ふとみると、後ろのドアから教頭先生が穏やかな顔で覗いていた。後わずかで夏休み。皆と長く会えなくなる。でもまた新学期、成長した姿を見れるだろう。暑い教室、汗が滲む。でもへこたれてはいけない。皆にしっかりいろんなことを教えないと。授業をする私の足元は、包帯が巻かれている以外、前と変わらない。ただ、今は教室の出口と職員室の自分の席、後自分の靴箱、3ヶ所に靴を置いている。非常時用。でもほとんどの時間、私は靴を履かずに過ごす。これが私の決断だ。いつまでも続けたい。いち小学校の先生であり続ける限り。
おわり