課題曲は大分完成してきたのだが、自由曲の方がなかなかまとまらない。音のずれが頭をくらくらさせる。先生もそのようで、だんだん機嫌も悪くなる。

「ああ~、もう、ストップ!ぜんぜんだめだ。おまえら、合わせようという気はあるのか?ったく・・・。ちょっと休憩。」

一気に場が緩む。先生は出て行ってしまった。なにげに、先生は音楽室内専用のスリッパを持っていて、みんなが靴下の中、それを履いている。みんなは何も言わないから、ま、いいか。


 コンクール前日、全校生徒が集まって、決起集会(?)を開いてくれるそう。そこで演奏を披露するという。

「・・・というわけだから、みんなすまないが、楽器を体育館まで運んでほしい。大きいものだけ、頼んだぞ。」

「はい!」

こんなとこでいやともいえない。かくして、太陽がキラキラ照りつける中、音楽室から体育館へ、楽器の移動が始まった。終わったら・・・。いや、そんなことは考えないようにしよう。

 体育館は新校舎を1階まで下り、渡り廊下を通った突き当り。4階分の階段を下りる。チョーキチ―。

「よし、いいか、せーの!」

吹奏楽部の男子はか弱い。ぎゃくに女子は結構強い。声掛けは男子だが、実際力を加えているのは大勢の女子たちだった。35人中28人が女子なのだ。仕方ない。

 私は、木琴を運ぶ人だかりの中にいた。音楽室内。

「よし、じゃあ、運び出すぞ。」

3年の先輩が号令をかける。

「いち、にの、さん!」

2年女子の手で木琴が浮き上がる。そんなに重くない。でも、人が押し合って、暑い。

そのまま音楽室を出る。当然、靴なんて履けない。靴下のまま階段を慎重に下りる。滑り止めのポチポチが足裏に食い込む。

つづく