気がつくと、朝だった。朝の起床の時刻を知らせる放送が鳴り響く。マサミがふとんから体を起こすと、他の子はまだ眠りについていた。30分後には朝食が始まる。遅れないように、早く起こさないと。2人は直ぐに起きたのだが、後の2人がなかなか体を起こさない。もう7時15分。朝食まであと15分。やっと起こすと、みんなで眠気顔のまま、食堂へ。
朝食は白米とのり、味噌汁に卵焼き、ウインナー、温かいお茶。朝はパン派のマサミにはあまりのどを通らなかった。朝食を済ませると、部屋のふとんを畳んで、着替えて、身なりを整え、グラウンドへ。登山の始まりだ。
込み合う靴箱でなんとかスリッパからスニーカーに履き替え、クラスごとに並ぶ。まだみんな眠そうな顔をしている。ここにきて、マサミは昨日見た物を思い出した。白い、人のような、動くもの。今日も山に入る。また見てしまうかもしれない。どこか恐怖感がある。1組から並んで山に入る。最初は昨日も歩いた、緩やかで歩きやすい道だったが途中の分かれ道を違う方向に進むと、一気に状況が変わる。傾斜のきつい箇所や細い橋、岩。きれいに整備されてはいるが、なかなかきつい。1時間ほど歩くと一旦休憩。朝食時に水筒に入れたお茶を飲む。冷たい、麦茶。気温は低いが、動いた温かい体をクールダウンさせ、じんわりとのどを潤す。限りがあるので、あまりたくさんは飲めない。登山を再開しようというとき、誰かが叫んだ。
「あ!あそこにだれかいる!」
見ると、山の木々の合間から、自分のいる場所から少し離れた森のなかに白い人影が見えた。動かず、じっとしている。こちらを向いている気がする。
「なんだあ?誰もいないじゃあないか。さ、早く行くよ。」
何故か、先生には見えていないらしい。あんなにはっきり見えるのに。再び見ると、その人影はいなくなっていた。
それからしばらく山道を登って行くと、一気に周りが開けた。あと少しで山頂だ。
「わあ、きれい!」
滞在中の学校がはるかしたに見え、その向こうには市街地がずっと続いていた。朝は霧が出て、もっときれいに見えるときもあるそうだ。
つづく