マサミは長袖のTシャツにフリースパーカーにジーパン、白にキャラクターのついた靴下。くるぶしソックスだ。それに履き慣れた瞬足。運動会ではあまり効果を発揮してくれないが…。
その白い靴下は、先程部屋まで靴下のまま歩いたせいか、既に黒い汚れがつきはじめていた。靴箱に靴を置くと、すぐに大部屋に集合するようにと放送があった。時間は厳守。遅刻した場合は、何らかのペナルティが与えられる。それは避けなくては。先生もそそにいるだろうということで、マサミ達は大部屋に急いだ。けっこう早めについた。集合完了の時間まであと5分ほど。部屋の隅の席に座っていた担任の高橋先生に相談にいく。高橋先生は40歳のダンディーな男の人。厳しいときもあるが、大抵はノリがよく優しく、相談にも真摯に対応してくれる。人望の厚い、人気の先生だ。奥さんと娘さんが3人いるそうだが、よくはわからない。その高橋先生に上履きを忘れた件について話す。
「あの、先生、私、上履きを忘れてしまいました…。どうしましょう…?」
「んあ?なんだって?上履きを…。それは困ったなあ。ちょっと待ってて。この学校の人に聞いてみるから。」
「すみません。」
「まあ、今はそのままいなさい。」
「わかりました…。」

「どうだった?貸してくれるって?」
「うん、学校の人に聞いてみるって。」
「そう…。貸してもらえるといいね。」
「うん。」
5月とはいえ、標高がいくらか高い山の上にいるわけで、暖房は使うほどではないが少し寒い。靴下だけだと、床の冷たさが伝わってくる。
話は諸注意から学校内の説明、スケジュールなどの確認などで、1時間ほどで終わった。長さんの話が長かった。それが終わるとこのあとは昼食。1階の食堂に行く。まだマサミは靴下のままだ。
食堂はとても広く。一度に200人を収容できるという。セルフサービス形式で、棚に置かれた料理を自分のトレーにとっていく。今日のメニューはライスにハンバーグ、ポテトサラダ、お茶。なんか不似合いだが、とても美味しそうだ。厨房では、おばさんたちが料理を作り、忙しく動き回っていた。5人でみんなもごはんを作るなんて、すごいなあと、マサミは感心した。
料理をとっていると、足元になにか踏んだ感触があった。うえっと思って見てみると、ポテトサラダのメイン、ポテトを踏んでしまった。最悪だ。席につくまでは爪先立ちでいって、席につくとテーブルにあったティッシュで拭き取る。靴下の右足の土踏まずに、こびりついていた。気持ち悪い感触だった。今度から気を付けて歩かないと。ふき取るときに見えた靴下の裏には、薄く足形に黒く汚れがついていた。早く、何か履かせて!