「みなさん、着きましたよ!さ、さ、寝てるひとも起こして、バスから降りて!」
「とうとう着いちゃった…。」
「どうしたの、マサミちゃん、酔った?」
「ううん、憂鬱だなあって思っただけ…。」
「どうして?楽しいじゃん、林間学校!学校で授業受けなくていいんだから!」
「それはそうだけど、私、山って余り好きじゃないんだ…。虫も嫌いだし、家から離れるのも…。」
「そうなんだ…。でも、私も虫、嫌いだよ。それ以上に楽しいこと、たくさんあるよ、きっと!」
「そうかな…。」
「うん、うん!さ、行こ!」
 

 「えー、私がこの、山奥青少年自然の家の館長、山奥清之助と申します。本日より3泊4日、従業員一同、精一杯お世話いたしますのでよろしくお願いします。まあ、ある程度は生徒のみなさんでやっていただくことになりますが…。では、従業員を紹介します。まず…。」

「では、生徒を代表して、2組の山田君が挨拶をします。」
「はい。この度は……、……どうぞ4日間、よろしくお願いします。」
「みなさんも、気をつけ、礼!」
「よろしくお願いします!」
「どうもよろしくお願いします。では早速、まずはお部屋に向かって下さい。もう振り分けはしてあるようですから。」
「はい。では、1組から順に、自分の部屋に移動してください。靴は脱いで、そのまま進んでください。詰まるから!館内の地図はありますよね?では、どうぞ!」

 いま小学校5年生のマサミは、5月のある日から4日間、普段通う小学校からは遠く離れた山の、自然の家で林間学校をする。3組のマサミは1、2組に続いて最後に館内に入る。館内は学校と同じく、床はタイル張りなため、上履きが必要だった。しかし今は、1つしかない靴箱の混雑を防ぐため、履いていた外靴を脱ぎ、上履きは履かずに部屋に行くよう、先生たちが叫んでいた。確かにそのほうがつっかえなくて、みんなすぐに館内に入れた。脱いだ外靴は後で靴箱に持ってくる。

一部屋には5人ずつ割り当てられた。マサミの部屋班員はマサミを班長としてその他に、ナナカ、レイカ、カリン、ノノカ。みんなおしゃれな格好だ。滞在中は2、3日目の一部を除いてごはんは食堂で、作られたものが食べられるし、お風呂も毎日入れる。

林間学校の予定は3泊4日。1日目の今日はこの後、部屋の片付けをして昼食、午後は近くの森の散策。そして夕食。2日目は登山。朝食を食べると少し準備の時間をとって、学校のすぐ裏手にある登山口から入る。標高412メートル、距離は2、3キロ。2時間ほどかけて山頂につき、そこで昼食。下山してその後は夕食まで自由時間、夕食後は星空観察、という流れだ。
つづく